人工衛星からのメール

ねすと

第1話 月曜日 20:38


『おはようございますこんばんわ 私は人工衛星です』


 そのメールは、そう始まっていた。


 オンライン上で家電専門の御用聞きサービスを開始してから早5年。珍しい機器からも依頼が来ることもあったが、人工衛星からメールがきたのはこれが初めてだった。


(まさか人工衛星とは……。これは将来、どこかの機密サーバとかからも依頼がくるんじゃないか?)


 慎重にメールを返す。どこで私のことを知ったのか、それと、どこの国から、なんの目的で打ち上げられたのかを問う。もしこれが軍事衛星で、変な情報を受け取ってしまっては目も当てられない。


 衛星からのメールはすぐにきた。私のことは、とある企業の設備機器から聞いたらしい。そして軍事衛星などではなく、とある企業が上げた人工衛星ということだった。


「あなたが打ち上げられた目的はなんなのでしょうか? もしお答えできるのなら、ぜひともお聞きしたいです」


『はい。私は、あなた様の質問に答えることが可能でございますゆえ、お答えいたします。私は流れる星になるため造られ、今まさに流れようと今か今かとその状態を待っております』


「人工の流れ星、ということでしょうか?」


『左様でござる。物わかりが良くて私は嬉しいです』


 なるほど。だとしたら、変な情報を受け取るということはなさそうだ。ひとまず安心したところで、私は本題に移ることにした。


「それで、私にどういう御用でしょうか?」


『簡単なことで申し訳ないのですが、私と会話していただきたく、このようなメールを差し上げました』


「会話?」


「イエス。私は、あなた様がいる世界の金曜日の、夜の9時ごろに流れる手筈となっておると伺っております。それまでの間、この世間知らずの私めに、いろいろご教授下されば、これほど嬉しい物はありません」


 私はその依頼を受けることにした。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る