芸術は人を映す鏡、と時に人は言うけれど…

 このお話を最後まで拝見して、まず頭に思い浮かんだのは、芸術鑑賞には付き物の『解釈』と言う言葉でした。

 絵画に限らず、そこに形象されたものに、人が抱く気持ちや考えることは、千差万別です。そしてそれはその人にとっての正解でしかありません。だからそれは「解答」ではなく「解釈」と言われるのです。

 『結末』とされる最後の章に提示されるのは「解釈」と言うものの曖昧さ、主観と言うものの頼りなさそのものを諷している気がしました。まるでアートを鑑賞しているような「認識の揺れ」が心地よく楽しめる作品だと思いました。

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