放課後の美術室。油絵を描く男子生徒と、彼に会いに来る女子生徒。
台詞だけなら、二人とも明るい性格のように思える。けれど、それぞれの気持ちを書いた地の文が、二人の発する明るい台詞とは裏腹の、暗い内面の葛藤を読者にだけ教えてくれる。
テンションを上げたり、声のトーンを上げたりして話す二人。自分の絵を嫌悪し、相手の絵を素晴らしく感じる二人。けれど誉める言葉すら、相手は脳内変換をしてしまい、賛辞をそのまま受け取れない。二人は本音で話さない。
多くの人が、上辺だけの人づきあいをしているのでは? 自分の弱さや悩みや嫌悪を外に出すことなく、一定の距離を保った人間関係。当たり前のようにしていることが、この作品を通してさらけ出されると、とても奇妙なことに思える。
好きな人と心を繋げたいのなら、まずは自分から心をさらけ出してみよう。本音を話してみよう。そんな気分にさせてくれる作品です。