霊感の強い友達③
私達とはクラス分けが違う
“自称霊能者の男子、脇山くん”の家の電話番号は、違うクラスの友達の友達から聞いた。
その日はもう夜遅くなっていたので、
明日、電話をかけようという話になった。
駅前から帰ったその夜、小夜子ちゃんは
私の部屋に泊まるようになってから、私と同じように、自分も二体の人形の夢を見てるという話と、
あの時、駅前で何を見たのかを、私に話して聞かせてくれた。
あの夜、小夜子ちゃんは
駅前に設置してある大きな丸い車用のバックミラーに、真っ赤なスカートと真っ赤な帽子をかぶった私が映っているのを見たという。
その私はミラーの中から小夜子ちゃんをじっと見ていて、同時にリアルにいる私も、小夜子ちゃんのことをじっと見ていたと。
(リアルの私の方は小夜子ちゃんの顔が怖くて目が離せなかっただけなのだけど)
あの時、リアルの私が小夜子ちゃんをビックリした顔で見ていたことに、小夜子ちゃんも気が付いていたらしいのだけど、
バックミラーに映る赤いスカート赤い帽子の私から目を逸らして、
リアルの私の“目を見るのは良くない”と判断したらしく。
バックミラーの中にいる私をとにかく睨んでいたと、言うのだ。
なぜリアルの方の私の目を見るのは良くないと思ったの??と聞いても、小夜子ちゃんは結局、答えてはくれなかった。
ここまでの話を考えると、九州のお人形と、私のドッペルゲンガー、この2つは何かあるのかもね??という結論になった。
自称霊能者の男子
脇山くんの家に電話をかけたのは、結局
予言の日の、前日だった。
私が電話を掛けてきたことに、
最初脇山くんは物凄く驚いて、パニックになっていたけど。少し落ち着いてきたのか、
私が今日、電話をかけてくることは予言で分かっていた。と、言っていた。
私と小夜子ちゃんは代わる代わる受話器を持って、一連の出来事を、脇山くんに話した。
脇山くんは、ああやっぱり…と言い、
「天色さん、人形はとても関係しているよ、僕にもそれは見えていた」
「お人形に何の関係があるの???」
「天色さんさ、…親戚の叔母さんの家で、
仕切りを踏まなかった?」
「仕切り???仕切りって何???
部屋の仕切りとかのやつ??」
「それが良くなかったんだよね」
仕切り…???
仕切りってなんだろう???
「脇山くん!明日が当日なんだよね??どうすればいいの私!!」
「大丈夫、落ち着いて!僕も食い止められるように頑張るから!!また明日の夜、怖かったら電話して良いからね!!俺も頑張るから!」
そう言って、脇山くんとの電話は終わった。
「食い止めるって何だろう??」
「頑張る…て??」
「仕切りって何のことだろう???」
私と小夜子ちゃんは、
終始興奮気味っぽい脇山くんが、
なんかちょっと胡散臭かったねなどと話しては、笑い話にして、
明日のことは大丈夫っぽいね、嘘くさいね、と笑いながら、その日もまた
私の部屋で、電気をつけたまま一緒に寝た。
次の日、
14歳の誕生日からちょうど1ヶ月後の当日、私達はどこにも出かけずに、ずっと二人
私の部屋の中で過ごした。
夜になると、たまに部屋の四隅でパシッ、パシッと、ラップ音がした。
「今のラップ音だよね?」
「マジで何か来てない??怖くない??」
私達は脇山くんの家に電話をかけた。
脇山くんはやっぱりこの時も、私が今、電話をかけてくることは分かっていたと言っていた。
そして、
「二人とも!天色さんの部屋から出ちゃダメだよ!
僕が今、天色さんの部屋の周りに結界を張ったから!!
なんとか今日一日、僕が食い止めるから!!
天色さんたちは、部屋から出ちゃダメだよ!!」
ん…!ん…!と、電話口から脇山くんの声が聞こえる。
脇山くんが両手を天井に上げて、
何かを食い止めているかのような姿が、私達には安易に想像できた。なぜなら彼が学校の教室で、同じように結界を張っている姿を
通り過ぎざま外の廊下から、何度か見たことがあったからだ。
いつもなら笑ってしまうのかもしれないけど、この時の私達は恐怖心でいっぱいだったので、素直に脇山くんが頑張って張ってくれているという結界に感謝をした。
「わかった!ありがとう!!」
私達は急いで部屋に戻り、二人でベッドの上に座って、布団を肩まで持ち上げると、
壁に背中をつけて、抱き合うよう寄り添ってから、部屋中を見回した。
“脇山くんて、なんとも胡散臭い”
“でもやっぱり怖い”
“どうなんだろ?どうなんだろう?”
私は、半信半疑な気持ちと、
でもやっぱり怖いという気持ちで、小夜子ちゃんにしがみついて天井を見た。
さっきよりも強いラップ音が、
部屋の壁をパシッパシッと叩きながら、
右、後ろ、左、正面と、移動して音を鳴らしている。
ラップ音が生き物みたいに、
ぐるぐるぐるぐる部屋の中を回っているのだ。
次第に、木が割れるようなバキン!バキン!という大きな音に変わり、加速度を増しながら回るラップ音。
音がする方から目が離せずに追っていると、
まるで部屋が宙に浮いているような感覚になってくる。
私は宙に浮いたような部屋の中で、バキンバキン強烈な音を立てて回るラップ音を目で追い、必死に小夜子ちゃんにしがみついていた。
かなりの長い時間、そうして二人で抱き合っていたのだけど、
少しずつラップ音は、小さく、
ゆっくりになって、
そして消えていくみたいに、なんの音もしなくなった。
静まり返る無言の部屋で
「ラップ音…凄かったね」
ボソッと私がいうと、小夜子ちゃんは
「部屋が回っているみたいだったね」
と、疲れた顔で、小さく呟いた。
私だけが見えてたわけでもなく、私だけが聞こえてたわけでもない。確実に二人で同じ体験をしたんだなと思う。
結局それだけで、
“自称霊能者の男子、脇山くんの予言の日”は、その後何事もなく、無事に終わった。
私が死ぬことはなかったし、それ以来、私のドッペルゲンガーの目撃情報も、金縛りや、クマのお人形の夢も見なくなった。
様子を聞いてきた小夜子ちゃんにそれを伝えると、
もしかしたら怖い夢や金縛りは自分のせいだったのではと話してくれた。
どうやら霊感が強い人と一緒にいると、霊感がうつるらしいのだ。
「!!!た、たしかに!www
小夜子ちゃんと泊まりっこしなくなったタイミングで、金縛りも怖い夢も見なくなったかも!!えええええ!!www」
私があまりにショックを受けるから、小夜子ちゃんが大笑いをして、私もつられて大笑いをした。
後日、夏休みが終わったあと、確か脇山くんにまた廊下で声をかけられて、何か話したような気がするけど、もう覚えていない。
クマのお人形のことや、仕切りの話、ドッペルゲンガーのことも分からないことは分からないままだし、物凄く怖い体験でもあったけど。
今では私の中で、面白かった不思議な体験の、思い出の一つになっている。
【夜中に1人でも読める】本当にあった怖い話【1話完結ショート集】 天色亭 @amairotei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【夜中に1人でも読める】本当にあった怖い話【1話完結ショート集】の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます