なぜか分からないほどスルスルと読み進められてしまうのは、主人公の中に自分自身が入り込むような一体感があるからなのではないかと感じました。文章表現があまりにも主人公の意識の近くにあり、それがある種の違和感をもたらすのですが、だからこそ、主人公の目と感覚と通してこの世界観を読み解こうとすると、主人公の意識が読み手に流れ込んでくるような気がするのかもしれません。
物語には世界観があり、キャラクターもそれなりにあるのでが、それ以上にこの主人公の意識に肉薄した視点が世界そのものではなく、主人公の内面世界を旅しているように感じさせます。その強烈な視点のフィルターを通して語られるのは、主人公そのものなのではないでしょうか。
そういった主人公の内面が前面に押し出されており、それと対照を取るような転生先の本来の人格が、また違う内面世界の扉のように思えます。
この作品では、精神世界に内面世界の扉が並び立つようにしてキャラクターが存在しているように感じました。それが彼らの存在している世界にベールのようなものを被せ、曖昧な印象をもたらし、世界観に何か不可思議な様子を加えているのではないでしょうか。
Twitterで紹介されたように、ちょうど心ズタボロのあたりまで読みました。
良い点
陰陽師ということで、結構世界観は作り込まれている感じでしたが、古代日本な感じで入れ込みやすかったです。ありがちな式神もありました。その式神には、イケメンの子、美女とか色々ありました。また私の大好物、重い話が呪いとか天才児特有の問題が絡んでいたのも好きですね。物語のテンポも悪くないのも良好でした。戦闘に関して、序盤は軽めにコミカルに描かれて、終盤は主人公の内面が出てきて疾走感ありました。キャラが生きているような会話の上手さも必見です。苦手な人はとことん悩みの種なので(自分) 終盤に入ると、重い人物関係。また天秤が擦れているような主人公。あたりの話が、わりと分かりやすく描かれていました。
ときおり三人称が入りますが、そこまで抵抗感や違和感は感じ得ませんでした。闇命視点だと、戦闘に冷静さが生まれて普段のギャップになった。またスピーディさも生まれていました。陰陽寮への依頼選出が雑って話題も、琴平とかの物語で拾われていたのも良い。
主人公の内面は中盤終盤以降に出てきますが、結構好みでした。ただちょっと遅いのは残念。早めに出したら読者を引き込めたかもしれない。ちなみに好きな部分は、善良で闇命に騙されたり揶揄われるときと異なり、歪な様子が好みですね。直前にセイヤとイチャイチャしてただけに、落差がジェットコースターでよかった。
気になる点
申したように、主人公の内面や目標(24で死なないように頑張るとは違う)が、早めに欲しかった。この子供に優しくない世界は嫌いとか、人助けたいからたくさん依頼受けようぜみたいなスタイルが共感を得やすい。
話数かなりあったので、〇〇話だよーっと記されていると親切だと感じます。
一言
最後の方の、ぜってー許さないという闇の意志を主人公から感じられてよかった。
気なったのは、元の内容とかなり違うっぽいこと。他の読者は「レベルアップ」とか「ポイントで前世の記憶」があって、???が頭に浮かびましたね。
クソガキ(褒め言葉)を含め、キャラの個性が非常に強く魅力的です。
物語全体としてもテンポが良く、コミカルな会話と愛される主人公に癒されます。
陰陽師ものとしても、言葉などが勉強になりつつそれを会話文の中に散りばめてくださっているのでわかりやすくスッと頭の中に入ります。
序盤に大きな伏線があり、その解決を目指しながら様々なイベントに直面してるのは読者を離れさせないたまにも上手いなぁと思いました。
個人的には、クソガキ(褒め言葉)がたまに見せるデレや甘えてるような態度が非常に好きでした。ギャップって強いなと…。
今後、この物語がどのような展開を経て結末を迎えていくのか、楽しみです。
「それでも俺は、人のために働きたい」
そう語って憚らない主人公が、事故とは言え、自身の及ばぬ結果となり、「やり直したい」と強く望む。
異世界転生の結果、主人公には代償としてレベル上げと敵を多く倒すことが求められる。
主人公は人を守れると解釈してそれに臨むが、「祓い屋」という力を付与されたことで、かつての人助けとは実は違うものになったと個人的に考えられる。
と言うのも、祓い屋という語からも分かるように、他者が負傷もしくは状態異常とも言うべき症状があるのを前提とする。
すなわち、お人好しであった彼は、相手の様子の如何を問わず、人を助けてきたが、転生によって「結界と浄化」という類似点はあれど、異なる文化圏において別なベクトルを得たのである。
多くの人を救う事で、彼の未練が解消されるのか、そしてその時、彼はどうなるのか。
上記の考察が全く的を射ていなくとも、興味深い展開が続くであろう事は、間違いないはずだ。