奈良を舞台としながら、まるで異世界のように不思議現象に多数出逢う街。
そう、ここは奈良は奈良でも「異都奈良」。
実際に奈良にあるという名所・名品を取り揃えながら、常人ではない登場人物たちが縦横無尽に駆け巡り、気がつくと馴染みのバーにすとんと腰を落ち着けて珠玉のメニューに舌鼓を打っている、そんな場所。
奇想天外な事象に驚かされながら、馴染みの古き良き店で気の置けない仲間たちと語り合う、郷愁をかき立てられる場所なのです。
奈良をよく知らなくても、まるでよく知っているかのように心が街に入り込んでしまいます。
目の前にはほら、あなたのためだけに用意されたスペシャルメニューが。
この独特の空気、ぜひゆったりと味わってみてください。
奈良には不思議な魅力がある。
一歩踏み入れれば空間は歪み、周りの景色が刷新されるような趣を持っている。作中の『古都奈良』というBARにも、その不思議な世界観が詰まっている。
店に集まる者たちの虚空を見透かし、それを埋めるための料理を介して無から有へと展開するマスターの「六科」。口は悪いが根はいいやつで、料理の腕は国宝の域。料理に使う材料も拘りと造詣が深く、素材の良さを十分に活かしたメニューが咲き始めのカルミアのようにポンポンと登場するのだ。さらに、この作品の素晴らしいところは「器」にある。メニューに合わせた趣のある器を出して盛り付けることで、舌だけではなく目でも味わい、堪能できる筆使いとなっている。飯テロ要素がある中で、タグに「飯チラ」と表したのは、文字から美的な視覚効果を匂わせるチラリズムとも言えるのではなかろうか。作中で発揮された諸々の表現力は、企画参加者の中でも随一と言えよう。
以上が、第二章で記された「ハーフ&ハーフ企画」での美味しい一時だ。この『異都奈良』の世界観は、これからも果てしなく続く……今日もまた、飛鳥(奈良)の地に新たな異人が生まれているかもしれない☆