仁義なき戦い?

  • ★★★ Excellent!!!

13世紀中ごろ、第7回十字軍を題材にした作品です。

『聖王の侵略』というのは、ちょっと逆説的な感じのタイトルですね。そこは、作者さんのねらいの一つかもしれません。

たとえば、カフェの席に座っているとき、

「そこ、おれたちが取ってた席なんで、どいてくれる?」

とか言われたら、面食らいますよね。

「え? 私も前から座ってますけど。取ってたっていつから?」
「そうねえ。えーっと、開店前から?」

ほとんど、たんなる嫌がらせ。十字軍って聞くと、こんなやりとりを想像してしまいます。

自分たちの信じる救世主が死んだ土地(エルサレム)は、異教徒の手に落ちていて、巡礼のお参りもできない。

「悪いけど、そこ、もともとおれたちの土地なんで、どいてくれる?」
「お前たちの土地って、いつの話よ?」
「えーっと、1000年ちょっと前?」
「ハァ?」

みたいな感じで始まる戦争(笑)。言われたほうも、はい、そうですか、と引き下がるような、ヤワな相手ではありません。

両者の戦争は、いわゆる「仁義なき戦い」ってやつになります。

いいかえると、両方の陣営は、これでもかとばかり、だまし合い、ばかし合い、出し抜き合う。敵から巧みに情報を盗んだり、まんまと罠におとしいれたり、ときには、味方同士でだまし合ったり……。

登場人物たちが、これまた人間くさく、したたかで、魅力的に描かれています。これも、作者さんの得意とするところ。とりわけ、エジプト側の女性キャラたちが、とても活き活きしています。

最後まで飽きさない物語です。

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