春夏秋冬とアニミズム


 今回は日本の四季について、語源と共に日本人が何を考えていたかを見てみます。


 〈語源〉

 最初に語源だけを羅列していきます。

・春:張る

・夏:

・秋:飽きる

・冬:

 となります。またそれぞれの語源の意味としましては、

・春:生命力によって新芽などが張る季節

・夏:作物や実がたくさん生る季節

・秋:作物の収穫がたくさんで飽きる季節

・冬:少なくなったと思われる生命力がまた殖えていく季節

 です。春と夏はともかく、秋・冬はどういうことでしょうか? この語源を紐解くには古代日本人独自の世界観を知っている必要があります。



 〈めぐる魂〉

 私は別の作品でも、この春夏秋冬の語源と日本人の世界観を解説しているのですが、そこでキーとしていたのがめぐる魂という概念です。古代日本人の信仰にはどうやら様々なものに魂が宿っては移り、宿っては移りを繰り返すという考えがあったようです。魂は「たま」ということからわかるように玉状の生命力で、そうした見えないけども確かに内面にあるとされるものが飛び交っていたと。

 さあ、このめぐる魂の概念を使うとどういうことがわかるのか。まずはわかりやすく春からいってみます。春は皆さんの印象通り、長かった冬を終えてたくさんの緑が芽吹こうとする季節です。だからこそ、そのめぐる魂がまたたくさんの枝葉や虫などの生命に入り込んで、その体をように成長させるということです。そして暖かな夏にはそうした生命力がさらに盛んになり、たくさんの果実や花が季節です。その後秋には稲や木の実などが大量に収穫できる季節です。この季節は人間やほかの動物がより多くものを(るほど)食べるために、魂が一時的に減っていきます。そしてその減った魂はどうなるか。それは冬に、見えないけども地中や木の中水の中、そうしたところにまためぐっていって、着実に増えていっているのです。

 まとめると、魂は春に生命を成長させ、夏に盛んにさせ、秋にその生命から出て行って、冬にまた別の生命に宿り増えていくのです。少しは古代日本人の信仰が見えてきましたね。



 〈応用例〉

 小説は自由な世界空間ですから、例えば神、あるいは魂の存在を明記しておいて、よりこの季節の移り変わりを、というのもいいですね。冬はいかにもしんみりとしてさみしいような雰囲気ですが、深夜にふと外を見ていると、白い魂がふわふわ飛び交っていたとか。

 また神が実際に目に見える世界なら、季節の変わり目に地上に降り立った神が腕を一薙ぎするとたちまち魂がその霊威によって変化して、季節が変わるとか。特に紅葉なんかは今見ても不思議できれいですが、理屈がわからなかった古代人にとってはよほど神のみ業として映ったことでしょう。一瞬にして山の木々が紅葉するとかもいかにもファンタジーっぽくて素敵でしょうね。







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和風ファンタジー創作ガイド 凪常サツキ @sa-na-e

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