神奈備・御諸・神籬


〈神の依り代〉

 題名にある三語はそれぞれ神の依り代に関連した言葉です。神奈備かんなびは、そうした神や神霊的存在の依り代がある場所、御諸みもろは神が直接君臨してくる場所、最後の神籬ひもろぎは神を迎える依り代です。この神籬は「霊降ひも」から転じたと言われています。

 さてこうして比べてみると、少しずつ違いがあるのがわかります。より局所的なものから広範囲なものへ並べれば、御諸みもろ神籬ひもろぎ神奈備かんなびとなります。風土記などを見ていると、山の名前に「神奈火山かんなびやま」と言う名前の山をよく目にしますが、これは名前からして祭祀に用いられる、あるいは神に関連する山であるということがわかりますね。



「神と依り代」

 そもそも神は、自然現象や運など、人間にはどうしようもない要素をつかさどるような絶対的存在としてあります。神とはそんな超常現象そのもののような存在である故に、祭祀など人間の都合通りに姿を見せてくれるはずがありません。そんな時にでも人間が一方的に神の存在を感じられるように、依り代――神籬ひもろぎ神奈備かんなびが必要となります。その名の通り大木や石などが代表的ですね。また神奈備はさらに大きい範囲でその大木がある地域や山一つを聖域や聖山とすることもあります。

 以上のことから、依り代はいくらから人間側の一方的な都合で作られたものとも言えますが、御諸みもろの場合は神が自主的に降りた(とされている)土地であり、どちらかと言えばあとから人間が定めた場所です。



「神との出会い」

 神奈備・御諸・神籬は多少の違いこそあれ神が「そこにいる」と考えられる、あるいは「本当にそこにいる」場所です。現実世界では、残念ながら神が万人の前に姿を見せてくれることはありませんが、ファンタジーはその点優秀で、筆者のさじ加減でどうにでもなってくれます。

 その際ネックなのが「どこで、どのように神と出会うか」でしたが、今回説明した神の降臨場所や依り代は、そんな心配を一瞬で解決できる知識です。特に御諸みもろは神が(動物や人間に姿を変えて)降臨する場所なので最も神と出会いやすい場所でもありますが、あくまで降り立つだけなので、その瞬間でなければ神籬を訪ねたほうがよさそうです。


 もう一つの使いどころはやはり呪文でしょう。例えば「神籬」は、その世界ではもう話されていない「古代語」で、なおかつこれを呪文に埋め込めば、神の降り立つ場所がわかるとか。

・ひさかたゆ あまり下る神々の 天降あまもる御諸 導き給へ


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