押し照る


 オシテル。意味としては、「あたり一面に光が射す」です。今の言葉にはない表現ですね。光がみなく照る、ということでしょうか。あるいは古代人から見たその光があまりに照るから、質量があるように見えたのかもしれません。

 ちなみに表記のブレとして「押光る」があります。「押」意味を文字通り伝えたい場合、「圧照る」という表記もできるでしょう。



〈活用例〉

 個人的には、「照る、光る、輝く」の最上級が押し照るだと感じています。ですから、そこには神の存在を感じざるを得ません。ではどういった描写が適切かということですね

①神の存在を感じさせる場面

 根幹に神という概念があったほうが、景色がよりファンタスティックに映ります。雲間から光が射すなど、姿は見えないが降臨のように見えることがまれにありますよね。そういった場面であったり、あるいは先ほどまで雨が降っていたところが急に晴れたりすると、水に濡れた大地がキラキラ輝きます。まさに神の威光が、地を押し照らす情景です。

②海と日光

 もっとも照り輝く(=光を反射する)ものは、自然界では水面です。現に「押し照る」の実例は、難波の海が大半であることからもわかります。例えば帝の使いが船で陸を目指すとき、陸から見ればその船と海は押し照っていますから、より印象的に、帝の威光が神のそれと重なることでしょう。

③雪と日光

 雪焼けという言葉もあるくらい、雪も日光を強く照り返します。雪原をずっと歩いていると網膜が焼けてしまうほどです。さんさんと押し照らされる地の雪、そしてそこにダイアモンドダストなども見えるとなれば、それはそれは神秘的な絶景になるでしょう。とくに小規模なつむじ風などによってダイアモンドダストが蚊柱のようにうねっているところなんかは、まさに神の気配を感じさせます。

④雲と日光

 これは少々特殊なものです。なにせ雲を見降ろさなければなりませんからね。あるいは濃霧でもいいでしょう。移動のために山を越える、その最中にふと後ろを眺めれば、霧を照らすこがね色の日。軍隊がそれを目にすれば太陽神の加護ととらえ、喜び勇むこと間違いなし。



〈強く日を照らす呪文〉

蜻蛉あきづ島 うまし国たるこの国に あまゆ圧照る日は光れ 神宿るこの御諸大地みもろおほつち

=この島、美しいこの国に、空から惜しみなく照る日の光よ、照れ。国土すべてに神が天下りして宿るこの国に。










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