「諦める」ということの難しさ

「人生諦めが肝心」

誰が言い出したか分からないが、私はこの言葉が好きではない。
諦めることの言い訳として、安易に使われることが多いように思う。

本当は、真剣であればあるほど、諦めることは難しい。
苦しくて泥臭くて結果が出るかどうかなんて分からない、無意味なことの連続に思えてしまう。
でも一度諦めてしまうと、諦めていない誰かの姿が鬱陶しくなる。
諦めない誰かの姿に、自分の姿が間違っているかのように感じてしまう。

そう簡単ではないのだ。「諦める」という営みは。


本作は「諦め屋」という特殊な仕事(?)を行う高校生の物語だ。もう、この単語一つだけでそそられるものがある。依頼人たちはそれぞれに「諦めたい」何かをもって主人公たちのもとに訪れる。

それぞれの登場人物たちの想いが交錯し、一つのクライマックスに向かって進んでいく本作を読み終えた時、きっとあなたの中の「諦める」という言葉は意味を変えていることだろう。

良作でした。ありがとうございます。

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