尖って錆びついた世界を誠実に語ること

 いつもトリップしてばかりの薬物依存の十七歳の少女が、ふとしたきっかけから小学生の女子と知り合うお話。
 仄暗く、アンモラルな雰囲気の青春ものかと思いきや、ただひたすらにシリアスで誠実な物語でした。モチーフに対する誠実さ。お話の軸に思い切り食い込み、かつ鮮やかな表現によって作品全体を彩る「薬物」というものを、まさかこのような物語として組み上げるとは思いもしませんでした。反省というか、自分のいい加減さを恥じ入るような気分。
 というのも、序盤から中盤、トリップしている最中の描写が、本当に鮮やかで気持ちいいんです。加えて主人公の境遇や言動の、頽廃的でざらつくような痛みの手触り。そこからつい想起してしまういわば「安い期待のような何か」を、でも綺麗に裏切って畳んでみせるところがもう最高でした。序盤の空気感が迷彩になった、というのはでも転倒した感想で、きっと物語の軸足は最後まで変わらずそこにある。
 この薬物というモチーフ、創作物であるがゆえに、ある種「投げっぱなし」のような形で扱うこともできると思うのですけれど。そこをしっかり最後まで面倒を見るというか、要はタグにもある「自助グループ」に関する部分。このへんの描き方がもう本当に大好き。この内容を書いてなお道徳的・教条的な物語にならず、物語本体が変わらず主導権を握っていてくれる、そのコントロールの巧みさに、なんだか嬉しさすら感じてしまいます。
 ちょっと結末をネタバレしてしまうようですけれど、ハッピーエンドなところが良かったです。きっと総合的に、全部「差し引き」で見たなら、全然ハッピーとはいえないであろうお話。一度見えかけた光がすぐに曇ってしまうような、そのままならなさの繰り返しこそがこの作品の軸であるような気がして、でもそれを丸ごと受け止めたうえで、なお前を向くこと。それをただの綺麗事にも、また都合の良い省略にも傾くことなく描き切った、とても誠実で強い物語でした。