歪曲

 昔、家にあったテレビが壊れたことがある。

 数十年前の話で、いわゆるブラウン管式の製品だった。大型でやたらに重い。それがどう壊れたのかというと、画像がいびつに縦に引き延ばされた格好になっていた。

 本作は、そんなねじ曲がった画像のように支離滅裂(※誉めている)な文章が続く。かと思うと、それが一点に集結していく……まるで様々な油性絵具を垂らした浴槽の水を、栓を外して抜いてしまうように。

 主人公の心に染みついた泣き顔のパッチワーク、当分私の頭から離れそうにない。

 必読本作。