人間って難しい。お喋り人魚と無口な店主、ひと夏の。壊れた恋の物語。

 タイトル、キャッチコピー、レビューと「人魚」のキーワードが入っていますが、現代恋愛の短編です。海の家を経営する男性と、関西弁でお喋りな若い女性の、一日限りの物語。恋愛要素は薄めかも。

 比喩と描写の使い方が見事で、作中の情景や主人公の心情にすっと引き込まれます。一人称なのもあり、主人公のカズさんが綴る言葉はちょっと詩的で空想的。純文っぽくなる雰囲気を彼女の軽快な関西弁トークが塗り替えていくので、読み心地はわりとライトでもあり、その絶妙なバランスが癖になります。
 真夏の塊みたいな彼女と、どこか後ろ向きな主人公と。二人は前に踏み出せるのか。
 ぜひご一読ください。