概要
薄明りの中に、二本足で短パンの人魚が立っていた――
ある夏の日、海の家を経営する水瀬一秋は、砂浜で一人の女の子に出会った。訳あって二度と女性は雇わない、と決めていた彼だったが、勢いに押され一日だけ彼女を雇うことにする。――そして、二つのひと夏の恋に、ゆっくりと別れを告げる。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!人間って難しい。お喋り人魚と無口な店主、ひと夏の。壊れた恋の物語。
タイトル、キャッチコピー、レビューと「人魚」のキーワードが入っていますが、現代恋愛の短編です。海の家を経営する男性と、関西弁でお喋りな若い女性の、一日限りの物語。恋愛要素は薄めかも。
比喩と描写の使い方が見事で、作中の情景や主人公の心情にすっと引き込まれます。一人称なのもあり、主人公のカズさんが綴る言葉はちょっと詩的で空想的。純文っぽくなる雰囲気を彼女の軽快な関西弁トークが塗り替えていくので、読み心地はわりとライトでもあり、その絶妙なバランスが癖になります。
真夏の塊みたいな彼女と、どこか後ろ向きな主人公と。二人は前に踏み出せるのか。
ぜひご一読ください。