第5話 募集条件
タダノは悶々とした日々を過ごしていた。
配送センターで忙しく働く日々がタダノには救いだった。
一生懸命働いていればマメジの事も考えなくてもいい。
ただ、目の前の仕事に専念する。
お客様にありがとうと言ってもらえることだけを考えた。
年は過ぎていく。
しかし、時と言うのは残酷である。
そんなタダノの復讐心も時がたつことで薄らいでいた。
マメジの死から13年ほど経っていた。
ちょうどそのころ問題児が第二配送センターのアルバイトの面接にやってきたのだ。
そう、プアールである。
年のころ13歳のまだ少女である。
今と同じ目をキラキラ輝かせて、面接を受けに来たのである。
しかし、その格好、ズタボロの汚れた服。
まさにごみの様なにおいがしていた。
応接室があっという間に掃除されていない公衆便所のにおいで充満した。
タダノと一緒に面接を担当した女子社員は、鼻を押さえて部屋から飛び出していく始末。
どう考えても、この女の子、普通の生活をしているようには見えない。
控えめに見ても路上生活者であろうことは間違いなかった。
プアールは開口一番。
「この、仕事の条件って間違いないんですよね」
差し出した求人広告の記載には次のように載っていた。
○未経験者大歓迎!学歴不問!年齢不問!
○優しい先輩が教えるから超安心!
○若い仲間が中心のアットホームな会社です。
○お給料はあなたの頑張りを評価します!
タダノは頭をかきながら、その求人広告を手に取った。
――まぁ、間違いはないな……
●未経験者大歓迎!学歴不問!年齢不問!
→すぐに辞めるから、そんなことこだわっとる余裕はないし
●優しい先輩が教えるから超安心!
→俺は優しい部類だと思う
●若い仲間が中心のアットホームな会社です。
→まあ、どいつもこいつも、すぐに辞めるから年齢は若いわな
●お給料はあなたの頑張りを評価します!
→一応、職能給制度の固定給だから間違いはないな
「おお、この内容で間違いないぞ! 大丈夫! 大丈夫! で、履歴書は?」
「り・れ・き・しょ? それって、おいしいですか?」
プアールの口からよだれが垂れている。
――いや、もういいよ……
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