第3話 追放!
第9営業部長のイヤマは、そんなマメジが腹立たしかった。
あいつのせいで、俺が役員会で怒鳴られる。
もっと数字が取れるだろ! しかし、マメジが足を引っ張った。
そんな数字が取れないマメジを金髪イヤマが責めたてる。
モンカスからのクレームは全てマメジのせい。
朝会の席では、マメジの七三の頭を揺すってこれみようがし罵倒する。
たまに取ってきた営業成績は、自分の手柄とばかりに派手なスーツを決めて社長に報告。
経費の私的流用はマメジの責任。
ついには自分の不倫相手の女の説得をマメジにやらせ、話がこじれるとマメジのせいにして、男のもとに謝らせに行かせる始末。
タダノには、マメジが日に日にやつれていくのが見てわかった。
――このままではマメジが持たない。
タダノはイヤマにマメジをいじめるのをやめろと言った。
しかし、相手は仮にも部長である。
目の敵にされたタダノは難癖つけられ、そして遂に、megazon本社を追放された。
タダノは第二配送センターの一配送員として異動させられたのである。
配送センターは本社とは離れた部署である。
まぁ、本社の人間からすると窓際の窓際。
まさに流刑地である。
異動決定の夜の本社屋上。
タダノは神妙な面持ちで柵に腕をかけもたれていた。
その横でマメジが空に浮かぶ月を眺めていた。
「済まない。俺の力ではイヤマのいじめを止めることができなかったよ」
「お前のせいではないよ。ありがとう。それどころかお前の方が俺のせいで本社から追放されたじゃないか。俺の方こそ、すまない……」
「なぁ、お前、この仕事やめろよ。その方が体のためにもいいとおもうぞ……」
「でもなぁ……俺には家族があるからな」
マメジは胸のポケットから一枚の写真を取り出すとタダノに見せた。
その写真には、生まれたばかりの赤子と妻が満面の笑顔で映ってた。
「この娘、可愛いだろ。リチルって言うんだぜ」
そういうマメジの顔は優しく微笑んでいた。
その顔を見てしまったタダノは、それ以上言うことができなくなっていた。
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