第7話 来た! 来た! 来た! 時は来た!

 それからプアールはリチルと行動を共にした。

 ゴミ箱を一緒にあさっては、笑いあい。

 川で釣りをしては、水遊び。

 パン屋で目を潤まして、パンの耳を貰う日々。

 それでも、二人は楽しかった。

 プアールもリチルも、お互いがいればそれだけで十分だったのだ。


 しかし、二人が13歳になるころ、突然、リチルはプアールのもとを去っていった。

 訳が分からないプアールは途方に暮れた。

 そうだ、リチルと一緒に住める家を作ろう。

 そう考えたプアールは公務員を目指した。この神の世界でも公務員は住宅ローンが一発で通る優良職業である。

 しかし、実力がないプアールは公務員試験の狭き門など通ることができない。

 そこでプアールは考えた。


 そう、お金があるじゃない。


 お金でしばけば、開かない門などあるはずない。

 その時である、プアールが求人広告を目にしたのは。

 megazon第二配送センター配達課の仕事である。

「コレって、いいじゃない!」



「タダノ課長は、すぐに減給、減給って言うんですから!」

 クリスマスの配送が2秒遅れたプアールは、時給を10円引かれ350円となっていた。

 やはり納得できないのか、今だにブツブツ文句をたれながら、ストーブに手をかざしている。


 しかし、タダノは完全無視!


 パソコンの受注画面を見つめるタダノは、てきぱきと配達員に指示を出していた。

 そんな折、一つの発注者に目が留まった。


『発注者 イヤマ ウコン 送り先 megazon本社』


 それはあのにっくきイヤマの名前であった。

 時間指定で、自分のオフィスへの配達である。

 しかもその物は、転職雑誌である。あの野郎、megazonをやめて他に行くとでもいうのか?

 自分が評価されないのは他人のせいだと今でも思っているのであろうか。

 いや、そうに違いない。

 己が愚かなのに、それをいつも他人のせいにする。

 タダノの心に、ふつふつと怒りがわいてきた。


 そういえば、今日はクリスマスの金曜日である。

 しかも今の時間は定例の全体会議の真っ最中。

 イヤマも会議室の隅っこで座っているはずである。


 ふと、タダノに悪魔がささやいた。

 今がマメジの復讐のチャンスだ! と……

 しかし、顧客第一主義のタダノ課長、そう簡単に悪魔のささやきに耳を貸すわけがない。

 ………………

 …………

 ……

 タダノは、受注画面の時間指定をわざと消した。


 この男! 簡単に悪魔に魂を売りおった。


 タダノ課長曰く。

 モンカスは客ではない!

 ゴミはゴミだ!

 だから、イヤマはウ●コだ!

 意味が分からないが、激しく同意する。


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