タダノ物語~本社から追放された課長が、旧友の仇をココで打つ!ざまぁ見さらせ!クソ部長!
ぺんぺん草のすけ
第1話 今日はクリスマス
「うぅぅ……さむいですぅ……」
吐き出される白い息ともに、女の子の言葉が漏れ落ちた。
朝日の中に浮かび上がるママチャリの影。
その後ろで青いポニーテールがたなびいていた。
降り積もった雪の中、一人の女の子が懸命にママチャリを漕いでいる。
寒い朝だというのに、その女の子の恰好は、それを見るだけで寒さを誘う。
白地に青ラインの制服は、ある意味、涼やかさが漂う。だが、なぜ、半袖とミニスカートなのだろう。
16歳ほどのみずみずしい張りのある太ももが懸命にペダルを上下する。
雪の白さに引けを取らないほどその肌は白く澄んでいる。
しかし対照的に、ハンドルを握る手は、黒ずみ、傷だらけ。
胸にかかれたmegazonのロゴマークが、だぶついているせいかしわが寄って上下する。少々胸は小ぶりな様子。
どうやら、ネットショップmegazonの女性配達員のようである。
megazonとは、神様の世界のネットショップの事である。ここ最近、急成長してきたブラック企業だ。
その女の子は配達の帰りなのか、空になったカゴのママチャリを一生懸命に漕いでいた。
どこまで配達にいったのか知らないが、疲れた様子は全く見えない。寒い中でも元気に立ち漕ぎ!
その目は青く輝いて、はつらつとしていた。
そう、彼女の名はプアール。女神プアールである。
ココは神様たちが住まう世界。いわゆる異世界である。
まぁ、神様と言っても、そんなに偉いわけではない。
飯を食って、ウ●コして、そして働いて、ただ寝る。
その内、家族なんかを作って、その短い人生を終わる。
まさに人間と同じである。
それでは、神様だから何か特殊な力を持っているとか?
昔はいたんだと思うよ。
そういう凄い人。
でもね、時代が進むにつれ、そういう能力って差別の原因になるじゃん!
あの子はあんなすごい力持っているとか、俺にはこんな力しかないんだって。
だから、平等にそういう力は使わないってことになっちゃったのよ。
いま時でしょ。
そのおかげで、神様の世界も、努力すれば報われるという、今の日本みたいに超ブラックな世界になっちゃったってわけですよ。
そして、今日はめでたいクリスマス。
えっ? なんで神様の世界にクリスマスがあるのかって? もう、細かいなぁ。
神の世界にもクリスマスはあるんです。
キリストがいるのかって?
いえいえ、神の世界のクリスマスはちょっと違います。
その昔クリスさんという神様が、川で魚のマスを大量にとってきて、ひもじい人々にそのマスを配ったことが始まりだそうです。
そう、貧しい人に愛の手を!
私は、貴方を大切に思っていマス!
マスだけに、なんちってね!
まぁ、なんか生臭いにおいがしそうではありますが、それは気のせい!
だって、最近のクリスマスは、焼きマスでは祝いません!
棒に魚をブチさして焼いたものではやはり色気がない。
やはりクリスマスと言えばチキンです! これ神様の世界の常識!
「何がクリスマスよ!」
皆、フライドチキンを片手に、今夜を祝うのだろう。
だけどプアールは、今日も一人でmegazon第二配送センターの使われていない倉庫の片隅でろうそくをミカン箱に立ててパンの耳をかじるのである。
そう、プアールは貧乏なのである、このバイトも時給360円。
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