見ず知らずの女性と海辺で出会う主人公。
主人公はなんだか彼女に惹かれてしまいます。
嵐が来そうだというのに、主人公は彼女に会えることを期待して海辺へ行くのですが……
読む前に現代ドラマであることを確認して読み始めました。
そしてどんどんと不穏になる展開を読み進めつつ「え?コレ、本当に現代ドラマで大丈夫?」と思いながらクライマックスへ!
そして、現代ドラマであることに納得。
思わず現代ファンタジーかホラーなのではないかと思ってしまうようなシーンを入れつつ、でも最終的に現代ドラマだったなーと感じさせるバランスの良さを楽しめました!
「僕」は堤防にたたずむひとりの奇麗な女の人を見掛けた。彼女の白肌はしっとりと潮にしめり、服までもがぐっしょりと濡れていた。こんなところでなにを、と訊ねた「僕」に彼女は「約束をしたの」といった。
そうして彼女は訊ねる。「明日も来る?」と。
思わず頷いたそれは、彼女と《約束》を結んだことになるのだろうか。
荒れる海に落ちていくように惹きこまれ、何度も読みかえしております。
怖い、ような。悲しい、ような。ああ、あるいは切ないのだろうか、このきもちは――と、一度読み終えてから現在まで、この掻き雑ぜられた胸のなかの感情を巧く言い表すことばを捜し続けています。けれども見つからないのです。
ただひたすら、浪に揉まれるようにして、言葉に、場景に、こころを掻き雑ぜられます。そうしてそれが心地いい。
どうかこの読了感に酔いしれていただきたく、こころからおすすめ致します。