最終話:転生はもう結構です!


 後日談、というかなんというか。

 六竜のみんなは俺と一つになってヴァルゴノヴァになってた訳で、ヴァルゴノヴァだった時の記憶はみんな共有している訳で。


 六竜の一人のどこかの誰かさんがまーたポコナにあれこれ吹き込んでくれたおかげで、ミナト・ザ・ブレイブストーリーは大好評。

 現在十六巻まで発売され物語りはついに俺が神になる直前くらいまで来てる。


 さすがにここまでくると話が突拍子も無さ過ぎて逆に読者が信じなくなってきているらしいが、それでもポコナは物凄い人気作家になって毎日大忙しである。


 なぜか俺の家の一室で黙々と執筆作業をして夜に城に帰り、また翌朝転移装置でやってくるという非効率極まりない方法で活動していた。

 定期的に夜這いに来るので注意しないと間違いが起きそうで怖い。相手は姫なので慎重に動かないといろいろまずいのだ。

 国を背負う覚悟はあまりしたくない。


 リリア帝国自体は差別意識もほぼ無くなり、かなり平和になったように思う。

 今でも英傑祭が開かれる度に呼び出されるのはちょっと面倒だけど。

 そしてその都度エクスにウザ絡みされて本当に迷惑している。

 しかも英傑祭には毎年ティララまで参加してるので俺は毎回命がけだ。

 今の所英傑王の称号はまだ誰にも渡していないが、そろそろ殿堂入り扱いで参加を辞退したいところである。


 ダリルは……そう、とうとうアレがアレしてアレな感じに収まった。


 テラとライルが結婚したのだ。

 テラが男だという発表は無かったので、きっとこの秘密は生涯二人で抱えていくつもりなのだろう。

 きっとテラを応援していたメイド女子は大喜びしている事だろう。


 しかし子を成せないのが分かっているせいなのかライルはアリアに対して何かと早く子供を作れと言ってくるらしく、ここの所その気になったアリアの猛アタックが続いている。

 俺とアリアの子を世継ぎにしたいらしい。アホかと。

 そんなぐいぐい来られたらいつか間違いが起きちゃうかもしれないじゃん。俺の心の弱さを舐めるなよ?


 レイラはあの後俺の街イシュタルに住み着いてうちの給仕をやってくれている。かむろの世話なんかもしてくれて大助かりだ。

 ただ困った事に彼女はちょっとだけ歪んでしまって、二人きりになると何故か胸元を見せてきたりスカートを捲ったりしてこちらを煽ってくるようになった。

 いつまでも平常心で居られると思わないでほしい。


 レナは英傑をやめた。

 そんな肩書が無くても自分の目指す場所がすぐ近くにあるから大丈夫とかよく分からない事を言ってた気がする。

 で、どうしてるかと言えば毎日エプロンして料理の特訓している。よく分からん。

 たまに裸エプロンしてるのなんなの? 我慢する方の身にもなってほしい。


 シャイナはシュマルに帰って防衛隊の隊長に就任したそうだ。なんだか防衛隊に物凄く強い魔物が入ったらしい。なんで魔物? 別に危険がないならいいけどさ。

 今の俺は邪竜の記憶、邪竜がまだジュードという人間だった頃の記憶も引き出せるようになったのでいろいろ複雑な気持ちである。

 なんだかんだジュードも彼女の事を大事に思っていたみたいだ。


 そして六竜達。

 シルヴァはなんだかんだで今まで通りリリア帝国でその手腕を振るっている。今でも時々こちらに顔を出すし、唐突に通信してくるので出来れば時とタイミングだけは選んでもらいたい。

 ちなみにリリィはシルヴァを追いかけてリリア帝国へ行った。

 風の噂によるとシルヴァと一緒に住んでいるとかなんとか……シルヴァはあまり語ろうとしないのでその事についてはいまいち定かではない。


 アルマはこの街が気に入ったらしく毎日のように夜になるとバーに入り浸って酒をちびちびやっている。俺やネコも頻繁に付き合わされるのだが、アルマは酒癖が悪くて困る。

 六竜の癖に酔うし、酔うと誰彼構わず絡みだす厄介な竜である。

 アルマが復活した事でかむろは完全に力を取り戻し、人の姿でアルマのお世話をする日々。

 いつも酔っぱらってぐでんぐでんになったアルマをかむろが引き摺っていくのが定番の流れだった。


 ゲオルは、基本的には畑を耕したり、時々長期的にフラっとどこかへ出かけてフラっと帰ってくる自由人だ。

 あちこちで本来の竜の姿に戻り空を飛び回っているらしく目撃報告がやたらと入ってくる。

 あまり人々を怖がらせないでほしいもんだ。


 マリウスは、リリィとシルヴァに頼まれて嫌々リリィに協力し、ラヴィアンの影人間に残った情報からその人々を再現するという大仕事をこなした後どこかへ消えた。

 シルヴァ曰く一人でのんびりしたいんだろう、との事。

 再現された人々は、厳密には生き返った訳ではなく、以前と同じ記憶を持って同じ外見をしたコピーなのだが……それはある意味本人と同じような物なのかもしれない。

 判断が難しい所だが、リリィはそこまで理解出来ないから別に問題無い。

 マァナは複雑そうではあるが、必死に国を立て直している。


 カオスリーヴァとママドラは未だに俺の中に居座っている状態だったが、経過は上々。

 ゆっくりではあるがカオスリーヴァも回復に向かっている。

 最近はカタコトで喋る事もあるくらいだ。



 そんなこんなで、おおむね平和な日々が続き俺の生活や環境は大きく変わっていた。なにより……。


「ラムおねーちゃん遊んでぇ」

「遊んでーっ」


 娘が出来た。


 ラムは俺の娘達の良い遊び相手になってくれている。

 毎日子供の好奇心に振り回されながらも楽しく遊んでくれているようで本当にありがたい。


 そしてラムは遊びとは別に二人に魔法を教えている。

 別にラムが先生なら安心だろうと思っていたのだが、先日姉の方が最上級の回復魔法、妹の方が涼しい顔で転移魔法なんか使っているのを目にしてしまい我が娘達の才能に震えた。


 なんでも、たまにイリスと遊んでて加減間違えると危険だからとかで身を守る術を身に着けておいた方がいいとかなんとか。

 ラムに魔法を教えてもらえる娘たちは幸せ者だ。これ以上の教師は他にいないだろう。


 ただ問題があるのは、娘達に妙な事を吹き込んでいる節がある。

 ある日目が覚めると娘達が俺の枕元で「ラムおねぇちゃんはないすばでー」とか「ラムおねーちゃんはいい奥さんになるよ」とか囁いてるのを聞いてしまった。

 娘を使って妙な睡眠学習しかけてくるのやめて?

 そんな事しなくたってラムちゃんは充分可愛いんだから。


「はいはいちょっと待つのじゃ。今日も魔法の修行いっとくか?」


「いっとくぅ♪」

「いっくぞー!」


「こりゃユイ! ティーラ! 走ると危ないのじゃー……ってもう行ってしもうたか。やれやれ元気じゃのう」


 やれやれ、なんて言いながらラムは微笑んで二人の後を追っていく。


「二人とも元気ですねぇごしゅじん♪」


「もうごしゅじんはやめろって……」


「いいじゃないですかぁ二人きりですしぃ♪」


「私もいるんだけど? 二人だけの世界に入るのはずるいんだゾ?」



『……ユイにティーラねぇ』


 なんだよ。


『見事に髪色は水色と濃紺かぁって思って』


 だからなんなの!? そこは御察しでしょ? 突っ込んじゃいけない所じゃないの?

 そのうちこんな事まできっとミナト・ザ・ブレイブストーリーに書かれちゃうんだきっとそうだ。


 せめてその時はもう少し直接的な表現はさけて読者になんとなくこういう事なのかなぁって思わせる描写を願いたいもんである。


『あの本ももうすぐシリーズ完結でしょう? そしたらミナト家のゆるりんハーレムライフ的なの書くって言ってたわ』


 マジかよ何考えてんだポコナのやつ……。


『なんだかその方がネタが多そうだって笑ってたけれど……』


 ネタねぇ? 別に毎日平和に暮らしてるだけだろうが。


『ネタならいくらでもあるじゃない。髪色の違う二人の娘、そして子供とそれぞれ同じ髪の色したお腹が大きな女性が……』


 や、やめろ。


『英雄は色を好むものであるっ! ……てね!』


 てね! じゃねぇんだよ。だからもっと読者に想像させるようなオブラートに包んだ表現をだなぁ……。


「ごしゅじん♪」

「だーりん♪」


『もう手遅れじゃない?』


 ……はは、もう開き直るしかないよなぁ。

 そうですよ俺は最低のクズ野郎ですよ。


『誰もそんな事言ってないんだけど……』





「ふぁぁ……まぱまぱ、おはよー」


 イリスが眠そうにフラフラしながら階段を下りてきた。


『ほら、もう一人お腹の大きい子が来たわよ』


 それも言わなくていいやつだから!

 これでも反省はしてるんだってば!


『そりゃあさすがに自分のむす……』

 わーっ! わーっ! わーっ!

 一応血は繋がってないんで! セーフだから! 本当の父親じゃないんで!


『私の娘に……と言いたい所だけどまぁ、ミナト君ならいいわ』

 ママドラに認められちゃうと後に引けなくなるんだけど……。


『あのお腹見なさいよ。既に後に引ける状況じゃないでしょ。ちゃんと責任とりなさいよね』

 あ、あれはママドラだって悪いんだぞ!? 夜中に勝手に俺の身体つかってしこまた酒飲んでべろべろになってただろ!?


『何よ。それで自分も意識が混濁しててつい娘に手を出したとでも言うの?』

 実際そうなんだよ!!


『……あー、うん、一応謝っておくわ。ごめ』

 くっ……他人事みたいに適当言いやがって……。


「どうしたの? まぱまぱ……あ、名前で呼んだ方が……いい? みーなとっ♪」


 階段をぱたぱた降りてきたイリスが前かがみになって俺の顔を下から覗き込んだ。


 ぐはぁっ……。

 ダメだうちの娘が可愛すぎて死ぬ。


『へぇ、うちの娘……ねぇ? あのお腹は何かしらねぇ』

 だ、だから一応娘ではあるけど血は繋がって……あっ。


 ……やべぇ事に今気付いた。

 確かに直接的な父親ではないけれど、その父親がもともと俺の一部なんだった。

 この場合関係性どうなるの?

 やだ考えたくない……! コンプライアンス怖い。



 きっとこの家の状況を読者が知ったらミナトって最低のゴミクズ人間なんだわって言い出すに違いないんだ消えてなくなりたいっ!


『本当にそう思ってる? また転生してやりなおしたい? 君ならその気になればいくらでもできるでしょ?』


 ママドラがからかうように笑いながらそんないじわるな事を言ってくるが、俺の答えは決まっている。


 部屋を見渡すと、三人はとても幸せそうににっこりと微笑み返してくれた。



 ……今が最高なので転生はもう結構です!





 ―――――あとがき――――――


 ここまでお付き合い下さいましてありがとうございます。最後まで読んで下さった方には感謝してもしきれません。

 いろいろと反省点は多いですが、それでも一年以上の毎日投稿を経て完結までこぎつける事が出来たのは読んで下さる読者様のおかげです。


 ちなみに結衣ちゃんって結局誰だったの? と疑問に思う方は第一話を見てもらうと分かるはずです。多分誰も覚えて無いと思いますが、何気に魔王キララがユイシスと初対面時「なんでお前がここにいるの?」とキレてるのはつまりそういう事だったわけです。


 ENDの種類は1~3パターンくらい考えていたんですが書いているうちに勝手に4案になっておりましてこんな事になってしまいました許して下さい。

 今までミナト君をかなり虐めてきたので最後はちゃんとご褒美をと思いまして。

 きっと今後もミナトファミリーは増えてしまうんでしょうね。

 二人生まれてて既にお腹に最低三人いますからね……ジオタリスも真っ青です。

 先程ミナト君にご褒美、といいましたが……この後どんどん尻に敷かれていく未来しか見えない……(笑)

 作者としても、子供ENDはともかくまさか腹ボテENDになってしまうとは思ってもみませんでした。


 ……と、後書きが長くなってしまい申し訳ありませんが、少しでもこの作品を気に入ってもらえたり、誰か一人でも気に入るキャラがいてくれたりしたら作者としては本望です。

 次回作なども準備を進めておりますのでよろしければ作者のフォローなどして頂けると進捗報告などできるかと思います。


 今後ともmonakaをよろしくお願いします♪

 それではまた別の作品で出会える事を願って。


 PS:ぜひぜひ最後に評価などしていって頂けると嬉しいですっ!



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【完結】転生はもう結構です! ✟100万回死んだ俺が最後の命で出来る事✟ monaka @monakataso

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