題名から受ける印象、冒頭の展開、それら全てがライトノベルというカテゴリーから受ける軽さを備えた物語です。
TS、最強、カリスマ…一見してテンプレートになりそうな要素が山盛りなので、冒頭だけ、序盤だけで斬り捨てるならば、その通りなのかも知れません。
でも、それは確実に勿体ないのです。
明るい文体で、集まる仲間も、それをとりまとめるぼっち姫も、褒め言葉としての「ろくでもない」という言葉が実によく似合うと感じるのですが、物語が進む内に、本当に碌でもない敵の存在が現れます。本格的なファンタジーです。
しかしながら、重厚な部分ばかりを見るのも、やはり勿体ないと思います。
日常系を思い出させるような軽さを伴っているのも、本作の特徴であり、そのバランスは一言でいって「今だからこそ」と感じずにはいられない良さがあります。
大長編といっていい物語ですが、そのバランス故の勢いが、文字数を感じさせない速さで読了させてくれるはずです。
姫と呼ばれる主人公の一人称が「俺」で始まるこの物語は、ちょっとネタバレしちゃいますが、広い意味でのTSものです。
ですが……。
TSものは結構ありますけど、この物語はありがちなものとはちょっと違います。
だって、調子に乗って後先考えずに神様にちょっかい出しちゃったせいで、神様の呪いで、意思に反して「じわじわ」とTSしちゃうんですから。
本人は「そんなの嫌だー」と思いつつも、「じわじわ」とTSしていく描写がたまりません。
どうやら神様は、ある目的を達成すれば呪いを解いてくれるらしいんですが、果たしてどうなることやら……。
設定の面白さや登場するキャラの魅力は勿論ですが、各話ごとに「引き」も素晴らしく、読み始めたら次回を待たずにいられません。
軽い文体ながら押さえるところを押さえまくった文章と、ギャグだけでなく時にシリアスになる展開と、先を読めないワクワク感を、一人でも多くの方に楽しんでもらいたいと願います。