第4話 顔
真っ青な空って、どう?
気持ちいい?
どこかへ行きたくなる?
ムカつく?
なんか落ち込む?
全部正解。
ほんとは、雨だったらいいのに。前が見えないぐらいの土砂降りならなおいい。
年下の彼は、要件の最後に必ず二段あけて、
『僕でよければいつでも話聞きますから! いつでも連絡くださいね! 待ってますから!』って書く。
嬉しいけど、きみには言えないよ。
だって、僕の目下の悩みは
『休日の真っ昼間に、「あー、昨夜飲みすぎた。吐きそう」ってアホみたいな一言を、
三輪車に乗る息子の後ろ姿を撮った写真と一緒にインスタにあげてる四十男がいて、そいつのことが好きで好きでしょうがないんだけど、
どうやったら堕とせると思う?』
なんだよ。
そんなこと言えるわけがない。
それとも、きみに話したら、何か解決の糸口がつかめるのかな?
慰めるだけじゃだめだよ。そんなの、きみが楽しいだけでしょ。
仕事を任せればプロフェッショナル。周りの人望も厚い。そして、休日はよき家庭人。
あなたについて、僕が知っていることといったら、せいぜいそれぐらい。
たとえば、一年の中でたった一日だけ、あなたを僕のものにしていい日があったら。
誕生日とか、クリスマスとか、バレンタインとか、そういう日じゃなくていい。
月曜日でも、水曜日でも、家族がいない休日でもいい。
何時までには帰らなきゃいけないとか、仕事仲間とか、あなたが守るべき誰かとか、
そんな余計なものがひとつもない世界で、あなたと僕だけがいたら。
そのとき、あなたがどんなふうに笑って、あなたの指先がどんなふうに僕に触れるのか。
それが、知りたいんだよ。
ねぇ。こんなにも晴れた日に、あなたは今、どこで何をしてる?
ねぇ、今なにしてる? boly @boly
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