記憶を消さずに何度も見たい作品

本作の世界観は並ある異世界小説の中でも群を抜いて【異世界】を感じる。
絶対的武断主義国家を舞台とするため平和的な現代人には納得はおろか、理解すら難しい場面も多々ある。

本作の主人公はその背景に加え、国家の期待のかけられる王太子の身の上ながら無能の烙印を押された弱者という恐ろしいほどまでに不安定な立場である。

この絶望的な状況があるときを境に終わり、羽ばたきのときが来る。

主人公の独白スタイルで進められるなか、時折語られる世界観は思わず好奇心をくすぐられるほど面白く想像を働かせたくなる。

一方で、主人公に染み付いた王太子の価値観は味方相手にすら妥協を許さず、その決断には読者ですら緊張を強いられるかのような場面もある。

時折垣間見せる世界の謎や見えざる陰謀、強者達の道理に巻き込まれつつも、恋人たちや配下との徒然ならざる"王太子"の日々は記憶を消さず何度も見たいものだ。

傑作はこれだ。

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