本作の世界観は並ある異世界小説の中でも群を抜いて【異世界】を感じる。
絶対的武断主義国家を舞台とするため平和的な現代人には納得はおろか、理解すら難しい場面も多々ある。
本作の主人公はその背景に加え、国家の期待のかけられる王太子の身の上ながら無能の烙印を押された弱者という恐ろしいほどまでに不安定な立場である。
この絶望的な状況があるときを境に終わり、羽ばたきのときが来る。
主人公の独白スタイルで進められるなか、時折語られる世界観は思わず好奇心をくすぐられるほど面白く想像を働かせたくなる。
一方で、主人公に染み付いた王太子の価値観は味方相手にすら妥協を許さず、その決断には読者ですら緊張を強いられるかのような場面もある。
時折垣間見せる世界の謎や見えざる陰謀、強者達の道理に巻き込まれつつも、恋人たちや配下との徒然ならざる"王太子"の日々は記憶を消さず何度も見たいものだ。
傑作はこれだ。
各々好みの違いがあるとはいえ、何故累計ランキングのトップ五指、最低でも十指に入っていないのか、疑問でなりません。
主人公最強系は幾らでも溢れていますが、これ程の完成度を誇るものは殆どないと思います。
軽すぎず読みやすい文章、中身の無い薄っぺらさや雑さとは無縁と言っていい設定の作り込み、世界観の壮大さは勿論、登場人物の作り込みも見事で、一部主人公の行動に納得いかない様に感じる部分もありましたが、それは主人公自身も自覚しているものであり、ある種の人間らしさであると感じました。
敢えて言うなら登場人物が増え過ぎて、一気読みする分にはいいけど、そうじゃないと登場頻度の少ないキャラは覚えていられなそうな点が、ネット小説として辛いかな、と思わなくもないです。
世界観がきちんと説明され、誤字もなく久々に佳い作家に出会えて嬉しかった。
一部主人公と王など目上に対する言葉遣いに違和感がある会話があったが、概ねそれを補ってなを光るものを感じた。
完全に目上視線で申し訳ないが、説明に簡素化も必要かもしれない。それを含めても今後の期待を、というより本作の先も、他作品も是非にも読んでみたい欲求に駆られる。
とはいへ、いまだ満足な作品の一遍も書けない私なのだが、師匠と勝手に決めたある作家は、膨大な有名著作に全く過不足なく編集者の添削すら不要な方だったので、いつかその域の作家になってくれたら、私の観る眼も確かだったと証明できるかも知れないと思いレビューを書いた。
失礼な物言いにご容赦いただければ、幸いに思う。
【ネタバレあり】〜123話まで
おそらく、この作品の中で、一番劇的な変化を遂げているのは、主人公だと思う。無能から最強(?)に変わっていったのは確かだが、その中で、内面的な面も変わっている気がする。純朴だった主人公が女好き気なったりと、たまに質を下げたり、結構大きな地位を得られて、質を上げたりと、忙しい主人公だなと感じさせた。他者の人から、実力を隠している面も、ある意味自重が高いと感じさせたほど。両親まで欺こうとしたほどだから、地位欲がないんだと思わせた。
英雄が最終的に娶った妻が100人ほど言われているが、主人公も例外ではないと思えてきた。
サガラの男衆たちもよく女衆に手が出さないもんだなと疑問。おそらく、嫉妬や不満よりも満足、主人への敬遠の方が高いから、そうさせたかもしれない。
女性人の登場人物が多すぎて、想像範囲内の女性像の描写がごっちゃになる。例えば、身長の高さや胸の大きさなどなど。
主人公に対して、身勝手さ、傲慢さの表れが見えてしまう。亜種族などの種族を助け、尊敬までされたことは事実だが、やはり、傲慢さうえ、そういう面が拭えないのが事実。
PS:主人公と大規模ヒロインの間に子供ができたら、一国の国ができそう( ´_ゝ`)