真っ白な雪と色鮮やかな世界の中で、"最愛の人"は何を紡ぎ出すのか——

戦争の終わり——。
惑星を旅する世界の中で起きた戦争、その終結。物語はそこから始まります。

目を覚ませば身体の一部は機械となり、大切な記憶も失っていた元軍人のイヴァン。
戦争の爪痕の残る社会の中で、自分の身体を売りながら生きていく少女スノウ。

ある日、イヴァンの落とした物をスノウが拾った事から、二人の運命は交わり進んでいく。傷というのは表面に見える物だけではない、と二人の視点が入れ替わりながら進んでいく物語を追っていくほどに思い知らされます。

しっかりとした文章と構成、なのに気がつけばどんどん「次を」と読み進めてしまうほどに惹き込まれてしまう。そんな作者様の筆力に脱帽です。

スノウに「雪」を見せようと始まった二人の旅は、時に傷を抉り鮮やかに蘇らせる。
そんな中で、二人の心が近づいていく描写がとても美しいです。

戦争が終わっても、人々の"心の戦争"は終わらない——。
そんな切なく厳しい世界の中で、スポットの当たる二人の物語。

きっと誰もが『最愛の人』を求め、その人の為に生きていく。
様々な生き様が交差する物語の果てに、二人の行き着く先は何処なのか。

是非見届けてほしいです。

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