振り返るとそこにいる――で、こんな話になる??

 「5分で読書」コンテストの『通学路、振り返るとそこにいる(ホラー)』部門用に作られただろうこの作品。

 振り返ると死ぬ系のやつに取りつかれた主人公が、全力で、振り返る話。

 しかし、その全力というのがキモ。
 怪しい管理人さんに人体改造してもらって、殺人武術の継承者に人体制御術を学び、幼馴染の告白を断る(現世への未練を断つ)。

 そこまでする?
 そこまでさせる?


 全力で振り返る話、というコンセプトについて、全力で突き詰めて書いた作品です。振り返るって後ろ向きな行為なわけだけど、特にこの話においては「=死」なので本当にアウトなんだけど、それさえも全力で突っ走るさまは、まごうことなき青春ですよ。

 しかも、前回の話の贅沢なアイディアの使い方もそうだったけど、今回も「アパート管理人の金髪碧眼マッドサイエンティスト」とか「一子相伝の殺人拳法の継承者である中学生であだ名はおかっぱ師匠」とか「悪霊殺しの魔眼のオッドアイで片恋で霊刀振りぬいては公共物をぶった切っちゃう系幼馴染」とか、ラノベ的キャラがふんだんに盛り込まれておるわけです。本来なら長編でも話が立つくらいのキャラを、たった数千文字の話に。贅沢!

 なぜ主人公が全力で振り返らなければならないのか、なぜ全力になれるのかは、実際に読んでみてくれればよいとして。

 個人的にぐっときたのは、主人公に告白して振られた幼馴染が振り返らずに立ち去るところですかね。失恋少女の切なさもさることながら、振り向くことに全力な主人公と振り向かなかった彼女の対比よ。ぐっ。