キャットフードの話
我が家には猫がいる。黒い雌猫である。御年16歳のBBA猫である。
2020年の7月くらいから、急に食が細くなった。いままで、キャットフードを与えれば皿が空くまで食べ続けるような食い意地の張った猫だったのだが、カリカリを残しがちになり、歳だから仕方がないか……と思うようになった。
そのころはまだ残したカリカリをあとから食べていたため、特に気にしていなかったのだが、だんだん残したカリカリも食べなくなってきた。かつお節を追加してどうにか食べてくれたが、それもほんのいっときで、結局カリカリをちゃんと平らげることは減ってしまった。
そうやって食欲が衰えると同時に、同じ場所にじっといて動かなくなった。寝ているときも起きているときも同じ場所でじっとしている。明らかに健康じゃない感じだ。
そうやってずっと同じところにいるので、キャットフードの入った器を持ってこないと食べなくなってしまった。このまま老衰及び夏バテで死んでしまうのだろうかと思った。なんとか食べさせるべく、カリカリにお湯をかけて与えてみたが、無反応である。
もしかして硬くて食べづらいのかもしれない。うちの猫はなんせBBAなので、歯が抜けたりしている。そう思って市販の猫缶を与えたところ夢中で食べた。おいしいものは食べるのである。その市販の猫缶は、匂いが完全に醤油をかけて食べたい匂いだった。
しかしうちの猫は子猫のころ死にかけを拾ってきて元気にした病弱猫なので、獣医さんから処方食キャットフードを買ってきて食べさせなければならない。だから食いつきのいい市販のキャットフードばかり食べさせるわけにもいかないのだ。さてどうしようか。
獣医さんに相談すると、パウチタイプのキャットフードの処方食があるという。それなら柔らかくて食べられるのではあるまいかと、わらにもすがる気持ちでそれを買ってきた。
……パウチのキャットフードを与えた時の、すごい食いつきたるや。
猫はめちゃめちゃ喜んでパウチのキャットフードを食べた。というかチャンクイングレイビータイプのグレイビー部分をペチャペチャ舐めた。結局乾いて固くなると残すので、残したキャットフードに食いつきのいい市販の小粒のカリカリを混ぜてやって食べさせている。
そうやって、元気にご飯を食べ始めたら、ずいぶんと猫は元気になった。走り回ったり、台所の様子を伺ったりと、若いころのような健康さを取り戻したのである。
結局痩せたままではあるのだが、健康なことに間違いはない。なんと春が巡ってくるぐらい元気になったのだ(うちの猫は病弱猫だったので、獣医さんの判断で不妊手術ではなくカプセルを埋めた。その効力が切れてあおーあおー言うようになった)。
獣医さんにも、「長生きさせなきゃね」と言われた。きょうも猫は元気で昼寝している。猫の食欲がなくなったらそれは単にキャットフードが硬いだけかもしれない。フードを変えるだけで元気になる場合もある。
ちなみに食欲がないときのために鶏肉でダシを取って冷凍しておいたのだが、結局パウチに変えたら食べるようになったので、そのダシは人間のカレーに投入された。
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