大河ドラマ「べらぼう」の話
いやあ面白い第一話だった、大河ドラマ「べらぼう」。
いきなり吉原遊廓の火事から始まって、これは恐ろしいことだ……と思うとともに、中島らもの小説に出てきた猥歌「大変じゃ大変じゃ 吉原あたりが大火事じゃ おそそで建てた家じゃもの ぼぼー燃えるは当たり前」を思い出してしまった。あんまりである。
そしてまたしても現代文明に精通した人物が出てきた。吉原遊廓にあるお稲荷さんのお社の狐が、しっぽのついた遊女姿の綾瀬はるかの姿で出てきて、スマホのマップを見せてきたのだ。「青天を衝け」の徳川家康がタブレットを持っていた以来の衝撃である。Xでは「デジタルに詳しいキツネとタヌキが出てきたんだからNHKプラスとNHKオンデマンドの宣伝をさせればいいのではないか」と言われていて、そのイラストが\どん/と出てきて笑ってしまった。やっぱり家康はタヌキなのか。
物語は吉原のきれいなところも汚いところもぜんぶ描いてやろうという意気込みを感じた。主人公の蔦重が幼いとき味方になってくれた遊女が病気で死んで、死んだあと着物をむしられて裸で捨てられている……というむごさよ。戦なんてなくても人は死ぬのだ。
さすが「おんな城主直虎」の脚本家だ、「おんな城主直虎」のときは最初スイーツ大河と噂されたが、「イチゴとみせかけてハバネロ、抹茶と見せかけてワサビ」と言われたのだ。ぜんぜんスイーツじゃない。そしておそらく「べらぼう」もそうなのだ。文化人大河でも人は死ぬしそれは悲しい。それは去年の大河でたっぷり味わった。
遊廓を取り仕切る偉い人たちがみんなめちゃめちゃ悪いのもいい。「遊女なんてどんどん死んで入れ替わったほうがいいんだ、そのほうが客も喜ぶ」と堂々と言うのである。おそろしや。
あといままで時代劇では流されてきたが、当時の既婚者女性は眉毛を剃る、というのを実際に映像にしていて安達祐実が眉毛のない怖いお姉さんになっていて「こわっ!!!!」と思った。
遊廓なので当然お姐さんたちは「ありんす」口調である。おお、笑点で木久扇さんがやってたやつだ! と思ったわけだが木久扇さんが後発である。
いろいろな感想を見てみて思ったのだが、やはり興味深いのは蔦重が「遊廓を流行らせて遊女にたくさん食べさせたい」と思っても「遊女が体を売らなくてもいいようにしたい」とは思わない、というのがとても深い。そこに人権はないのだ。
なんというか「楽しいけれど残酷」な大河になりそうだな、と思った。セリフ回しがなんとも江戸っぽくて楽しい。「鼻から屁が出る病になればいいんだ」とか「目からしょんべんが出る病になればいいんだ」みたいなセリフは面白かったのでぜひ小説に活かしたいと思ったがそのまま使ってはただのパクリなのであった。
いやあ面白かった。楽しかった。続きが楽しみだ。平賀源内が胡散臭くてすっげえ喋るのも面白い。
なにより蔦重がかっこいい。横浜流星という役者の芝居を観るのは初めてだが、とてもカッコよかった。
というわけで今年も日曜日が楽しみだ。世界初のライトノベル編集者の話だぞ、ワナビみんな観ろ。土曜日には昼に再放送しているしいまはNHKプラスというものもある。
なおそのあとXに流れてきた「異世界の都市を作るときはその街で火事が起きたらだれが消すのか考えるとヨシ」というツイートはなるほどなあと思った。騎士団なのか民間組織なのか冒険者なのか、冒険者だとだれが雇っているのか、火を消せる水の魔法があるのか、みたいなことであった。なるほど……。
とにかく、たぶん今年も変なタグ(たとえば「真田丸運動会」とか「鎌倉殿甲子園」とか「周明の生存ルートを考える」とか、大河ドラマの内容が面白しんどくなってくると発生するもの)が発生するのではないのだろうか。それくらい面白いからみんな観よう。
べらぼうはいいぞ!!
掃き溜めエッセイ 金澤流都 @kanezya
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