第7話:再婚
結局、スタンピード期は七日七晩続きました。
アーネスト皇太子殿下の知らせを受けた皇国は、重い腰を上げて全十六の騎士団から十個騎士団をダンジョンに派遣しました。
私はその全員の前で、ダンジョンボスを百頭斃すことになりました。
スタンピード期が、ダンジョンボスを斃さなくても七日七晩で終わるのか、それとも百頭斃さなければい終わらないのか、それは今でも謎です。
「皇国を亡国の危険にさらした佞臣奸臣を討つ、我に続け!」
アーネスト皇太子殿下は、今を好機と皇国を蝕む獅子身中の虫を退治されました。
十の騎士団が、モンスターに立ち向かう雄々しい殿下の姿を見知り、共に肩を並べて戦った事で絶対の忠誠を誓っていたのです。
同時に、いつまたスタンピード期が始まるか分からないという、危機感も共有していましたから。
ですがその危機感が、私を追い込む事にもなりました……
「ラマーニュ嬢、貴女の強さに惚れました、私と結婚して欲しい」
殿下は、強さに惚れたとプロポーズをされて喜ぶ女がいると思っているのですか?
「ですが私は乙女ではありません。
それどころか一度結婚していて、夫に浮気されて離婚した身です。
それのこの通り、可愛い子供までいるのですよ。
皇太子殿下と結婚できるような立場ではありません」
「ああ、その事は全然気にしなくていいです。
これは皇国を護るための完全な政略結婚です。
ラマーニュ嬢が皇国にいてくれなくては、次にスタンピード期が始まったら皇国は滅んでしまいます。
力づくでおし止めることが不可能なのは、全騎士がよく知っています。
お金や土地はラマーニュ嬢なら自力で手に入れる事ができます。
ですから爵位と名誉と愛で縛ろうと思ったのです」
なんと正直な方なんでしょう。
それも全部本心から笑顔で話せるのですから、その胆力には驚かされます。
でも、どうしようもない大きな問題があると思うのですが……
「ビュースの事はどうするのですか。
殿下なら、国と民のために私を心から愛する努力をしてくださるでしょう。
いずれ子供ができて、次期皇帝候補となるでしょう。
その時に皇室の血を受け継いでいない兄がいては問題になるのではありませんか」
「ラマーニュ嬢にはこのダンジョンを領地として女侯爵になってもらいます。
ビュースにはその侯爵位を受け継いでもらいます。
私達の間に生まれた子供には、皇位継承を争うことができない、心から信頼できる兄がいることになります。
むしろ好都合ではありませんか」
ここまで国のため民のために政略結婚を割り切る殿下に、これ以上無粋な事を口にしては女が廃りますね。
私も一度は政略結婚して、相手が裏切るまでは務めを果たしたのです。
ビュースのために侯爵位を手に入れると割り切って、政略結婚を受けましょう。
「そうですね、殿下がそこまで考えてくださっているのなら、プロポーズを受けさせていただきます」
夫が浮気をしたので、離婚して子連れ冒険者になりました。 克全 @dokatu
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