第3話:子連れ狩り

 私だって、受付嬢に言われなくても、ダンジョンの危険性は十分認識していますから、安全策は何重にも用意しています。

 そもそもダンジョンを単独で攻略できる実力があるのに、深層にまでは行かずに、中層で雑魚狩りをしているのです。

 まあ、中層の魔獣を雑魚と言ってしまうと、命懸けで挑んでいるトップ冒険者グループに悪いですが、転生して前世の記憶と知識を活用している私は別格なのです。


「ママ、ごはん、おなかすいた」


「お腹がすいたのね、直ぐ食事にするからね」


 私は百層もある大ダンジョンの中層、六十三階層で食事にする事にしました。

 当然ですが結界を展開して安全を図っています。

 ビュースが食事している間は、私は周囲に気を配り、自分は何も食べません。

 私が食べるのは、ビュースが食事を終え、満腹になって寝てからです。

 私の背中でスヤスヤと眠るのを確認してから、食事をするのです。

 まあ、作って魔法袋に保管しているおにぎりと焼肉だけですけど。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

「助けてくれ、誰か助けてくれ、お願いだ」

「キャアアアア、いや、いや、イヤあああああ」

「ちくしょう、このやろう、死ね、ウッ」

「こなくそ、やろう、いい加減死にやがれ」

「負けるな、直ぐ助けてやるぞ」


 六人組の冒険者が苦戦しているようですね。

 自分達の実力を過信して、二階ほど一気に下りてきたのでしょう。

 この辺りまで来られるという事は、このダンジョンではトップグループの一角なのでしょうが、それにしては迂闊過ぎる判断ですね。

 そんな連中のために、ビュースの食事を中断する事はできません。

 馬鹿は死んでしまえばいいのです。


「かわいそう、たすけないの」


「そうね、助けてあげましょね。

 ビュースは優しいいい子ですね」


「いいこ、わたしいいこ?」


「ええ、ビュースはとてもいい子ですよ」


 運のいい連中ですね、とても優しいビュースに感謝しなさい。

 私はビュースを背負いなおして、危機を迎えている冒険者達の所に一気に駆けつけましたが、流石の私も少々驚きました。

 本来なら深上層に出るはずの強化オークの上位種がいたのです。

 オークチャンピオンと言った方が分かり易いでしょうか。

 恐らくですが、ダンジョンが変質しようとしているのか、魔素の影響で狂いが出てしまっているのでしょう。


「どきなさい、邪魔です」


 今にもオークに犯されそうな仲間を助けようと、負傷の少ない戦士二人が必死で攻撃していますが、軽くあしらわれています。

 もしオークが人を犯す事に興味を取られていなければ、もっと早く冒険者達は全滅していたでしょう。

 それくらい実力に差があります。

 それにしても、ダンジョンの魔獣が人間を犯そうとするなんて、前代未聞です。

 これは本格的に異常事態が始まっていますね。

 

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