夫が浮気をしたので、離婚して子連れ冒険者になりました。

第4話：危機感

「ダンジョンに異常が起きている。

　恐らくだが、スタンピードが起きようとしている。

　私の証言だけでは決定できないだろうから、今直ぐ確認した方がいい」

　冒険者の義務を果たすために、狩りを中止してギルドに報告しました。

　本当は直ぐにでも国に報告すべきなのだろうが、それができない事は、曲がりなりにも貴族として生きてきた私が一番よく分かっています。

　複数の覆し難い証拠を提出しなければ、周辺地域への避難勧告などできません。

　まあ、動かし難い証拠を提出しても、決定には時間がかかるでしょう。

　貴重な時間が浪費され、多くの犠牲が出る事でしょう。

「分かった、直ぐに冒険者に探査依頼をだす。

　そこで相談なのだが、ラマーニュにも探査依頼をだす。

　探査時の割増買取をするから、できるだけ間引いてくれ、頼む。

　俺の権限でやれるのはここまでなんだ」

　やれやれ、仕方ありませんね。

　この男には、身分を隠して冒険者をした時に世話になりました。

　転生した国では、伯爵令嬢としてガチガチに縛られた生活でしたから、転移魔法を覚えてからは、夜毎この国に来ては自由な生活を満喫していたのです。

　伯爵令嬢と平民冒険者の二重生活は結構楽しかったですから。

「分かったわ、でも中下層までよ。

　可愛いビュースを危険な場所には連れて行けないからね」

「ふっ、中下層を安全な場所と言えるの君くらいだよ、ラマーニュ。

　それで十分助かるよ、じゃあ、頼んだよ」

「任せなさい」

　私はそう答えると、一階層から順位下に降りていくことにしました。

　いつもの私なら、初心者やロートルの獲物を横取りするような真似は絶対にしないのですが、今回は別でした。

　すでに自分達のレベル以上のモンスターに襲われ、危機に陥ってる冒険者が数多くいたので、その全員を助ける意味でも、階層のモンスターを皆殺しにしました。

「スタンピードが起きるかもしれない。

　他のパーティーと連携して備えなさい。

　私が殺したモンスターのドロップ品はあげるから、文句はなしよ」

　私は無尽蔵ともいえる膨大な魔力を使って、一度の数多くの魔弾を放ち、モンスターの群れを瞬殺していきました。

　一瞬も休むことなく、一気に階層を下に向かいます。

　中には文句を言う冒険者もいましたが、気にする必要はありません。

　かかってきたら、返り討ちにするだけです。

「ありがとう、助かったよ」

「ありがとうございます、命拾いしました」

　全員を助けられたわけではありませんが、私がいなければ死んだはずの人間を、千人以上助けられたと思います。

　ですが、深く潜るほど、助けられない冒険者が多かったです……