第5話:アーネスト皇太子
本当は七十層に陣取り、遅滞攻撃を繰り返したかったのですが、不可能でした。
三十階層より深い所のモンスターが湧いて入り口を目指したら、今いる冒険者達では迎撃が不可能です。
私以外の冒険者だけで、絶え間なく湧き出るモンスターを全部倒せるのは、二十階層まででしょう。
なので、一番深くまで潜っていた冒険者パーティーを助けたら、一緒に後退して二十階層でモンスターを迎え討ちました。
「私が狩ったモンスターのドロップ品は、探査依頼の割増買取になっている。
差額は運び賃にやるから、全部ギルドに運んでくれ。
私の名前はラマーニュだ」
「「「「「はい」」」」」
私は二十階層を絶え間なく移動して、深層から溢れ出てくるモンスターも、絶え間なく湧いてくるモンスターも、全て火弾で斃した。
今湧いてくる程度の強さと数なら、消費する魔力よりも回復する魔力の方が多い。
ドロップ品を確保できる間は、できるだけ集めて金にしたい。
私のためではなく、冒険者達の士気を維持するために。
このスタンピード期がどれほど続くか分からないが、冒険者の士気が落ちたら、私一人で一階層で迎え討つ事になってしまう。
★★★★★★
二日二晩モンスターを迎え討ち続けましたが、そろそろ限界ですね。
もうすでに深層のモンスターが湧きだしてきていて、一頭でも逃せばこの国が滅びかねない大惨事になります。
冒険者達のほとんどが、ケガをするか気力が尽きたかで、戦えない状態です。
いえ、ケガは私が斃したモンスターのドロップアイテムで治せます。
だから戦線に復帰してこないのは、気力が尽きたのでしょう。
「フレディさん、そろそろ私も逃げますから、冒険者や近隣の村々に避難勧告を出して下さい」
今回のモンスター迎撃で、受付のベテラン男性の名前を初めて知りました。
名前など覚える気もなかったのですが、彼がダンジョン内に入ってきて、逃げ出そうとする冒険者達を叱咤激励している時に偶然耳にしました。
知ってしまった以上、使わないわけにはいきません。
それに、これが最後の会話になるかもしれませんからね。
「分かりました、まだ国もギルド上層部も決断できていませんが、私の独断で避難勧告を出します。
申し訳ありませんが、あと半日持たせてください」
「約束はできませんが、努力はしましょう」
最深部のダンジョンボスが複数湧くようなら、流石に半日持たすのは厳しいです。
可哀想ですが、その時には諦めてもらいましょう。
私が一番大切なのは、ビュースですからね。
「よく守ってくれた、後は我々に任せてくれ、近衛騎士団、防御陣を敷け!」
装備から明らかに高貴なモノが現れて、私に声をかけたかと思ったら、テキパキと騎士達を指揮して、モンスターを斃しだした。
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