夫が浮気をしたので、離婚して子連れ冒険者になりました。

克全

第1話:不倫

「ふん、これでよく分かったでしょ、私の方が女としての魅力は上なのよ。

 貴女がボルジュと結婚できたのは、同じ伯爵家の令嬢だったから。

 私が男爵令嬢でなく伯爵令嬢なら、ボルジュは私の方を選んでいたのよ」


 ボルジュの寝室で不倫している所が見つかった、いえ、私に自分が上だと言いたかったスリュアは、わざと私を寝室に来させたのです。

 まあ、この子は元々他人のモノを欲しがる性格でしたし、妙なコンプレックスがあるのか、事あるごとに私のモノを奪おうとしていましたから。

 まあ、私もボルジュとは別れたかったので、丁度よかったです。


「いやあ、スリュアに露出癖があるとは思わなかったのだよ。

 君はこういうのが嫌いだったよね、悪かったね。

 次からはもっと相手を選ぶようにするよ、ごめんごめん」


 ボルジュは全く悪いとは思っておらず、言葉だけの詫びを入れてきます。

 しかもスリュアが横にいるのに、スリュアの事などなんても思っていないと、平気で口にする厚顔無恥な態度です。

 貴族令嬢の責務として政略結婚はしましたが、もうその必要もなくなりました。

 ボルジュの放蕩で、ティルース伯爵家は完全に没落してしまいましたから、縁を切っても両親も文句は言わないでしょう。


「バッチーン」


「グッシャ」


 スリュアは一応女ですから、平手打ちで勘弁してあげます。

 前歯が四本ほど跳んでいましたが、入れ歯をすれば大丈夫でしょう。

 少しくらい顔が歪んでしまっても、性格ほど酷い歪みではありませんから。


 ボルジュは男ですから、拳骨を頬に入れてやりました。

 頬骨と上顎骨、それに下顎骨と奥歯も砕けてしまったと思いますから、一生硬いモノは食べれないでしょう。

 でもそれは、私に汚いモノを見せた罰ですから、仕方がありませんよ。


「ボルジュ、貴男とは離婚します。

 教会に行って今日の不貞、いえ、今までの不貞を全て告発します。

 そして、息子のビュースは私が引き取ります。

 文句があるならいつでも受けて立ちますから、掛かってきなさい」


 私は思いっきり啖呵を切りましたが、気絶している二人には聞こえません。

 でも、屋敷で働いている使用人達にはよく聞こえたはずです。

 物見高い彼ら彼女らは、私が立ち去った後で、この御現場を見に来るでしょう。

 そして王都中に噂を広めてくれる事でしょう。

 私が何も言わなくても、離婚の原因が誰にあり、誰が悪いのか広めてくれます。

 教会の裁定や、裁判の結果がどうでようと、王都の世論を私の味方です。

 貴族社会が愛人文化であろうと、庶民には関係ない事です。

 さあ、今日からは私は自由です!

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