音楽を目指す中高生は、技術的には早熟を求められ、切磋琢磨の毎日を強いられる。そうして身についていく器用さと比べて、生き方においては不器用であることも多い。そんな若者たちの純粋さ、歯がゆさが感じられ、青春の風薫る作品でした。
音楽の世界は、正直怖い。華やかな分、ドロドロした話が絶えないからだ。ここに出てくる登場人物も、そんな、ドロドロに巻き込まれるか、支配されるかと意地を張り、張り続けて、希望と自分を見失った。それでもなお、彼は奏続ける。感情は死んでも、音楽は流れる。成果は変わらず、自分が変わるわけじゃない。それでも失う前の記憶を呼び起こして、「世界は明るかったのだ」と叫ぶように。『ラ・カンパネラ』。イタリア語で、『鐘』という意味。
学校の、吹奏楽部を舞台とした男子と女子の物語です。短編であるにもかかわらずリアリティがあり、どこかで自身の学校生活を重ねるような部分がありました。表題にもあるように読後感はほろ苦くも爽やかで甘酸っぱいブルーベリーを食べた時のような感覚がありました。素敵な物語をありがとうございました。
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