貴方に本物の恐怖をもたらすのは、家具という「物」ではなく……

読み応えのある怪談。若者と思われる人物の一人称で語られ、まさに「怪談」ですね。

ちょっとこれは内容のネタバレになるんですが、面白いのは「いわくのある物品」に怪異が憑くのではなく「ある行為(ここでは家に屏風を置くこと)」が不吉を呼び込むという話の発端です。

考えてみれば、いわくのある物品なんてそうそう現代の家にはありませんが(あったとしても知らなかったり)、もっと軽い、ジンクスくらいのノリで受け継がれている習慣やタブーは多くの家にあるものです。
寝る時は豆球を点ける派だとか、夏に家族旅行すると何故かトラブルが起きがちだからずらすとか。

「この家に屏風は良くないんだ」
いかにもありそうな話です。
ちょっとした巡り合わせの悪さ、縁起の悪さから生まれた程度の家訓。

しかし、「不吉」に相対する時の人の心、その恐怖は底なしなのです……

最初に語られる絵画の構図の話を念頭に置いて、ぜひ最後までお読み頂きたい。抜群の逸品です。

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