屏風のぞき

作者 武江成緒

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★★★ Excellent!!!

全12話。1話につき2000文字程度で軽く読み進めていける構成になっているが、その内容は禍々しくも得体の知れない何かについての語り。「ホラーですか……。ちょっと苦手かもしれませんね」なんて読者には全くおススメしないどころか、おススメしてはいけない具合の恐怖小説だ。

人間がいちばん恐怖を感じるタイミング。それは恐怖を生み出す怪異やら怪物やらが目の前に現れる寸前。ここの時が一番怖く、それがなぜかというのが、この作品の語るところだろう。恐怖を増長させる要因は人間の想像力。その強さが一番大きくなるのが上記のタイミング。

言ってしまえば、恐怖というのは想像によるところが大きい。読者に、観客に、想像さえることがホラーとカテゴライズされる作品において最も求められる技術である。そうした意味で「小説」という表現方法が、他者に恐怖を伝える上で最も有力な方法だと思う。

その中でも「語る」という行為。これが一番、恐怖を伝達する。本作はその形式を用いて、我々読者に確かな恐怖を伝えてくるわけだ。しかも、これがただの「語り」ではない。語り手の正体が最終話まで判然としない。

著者は、我々に想像させているのだ。

迎える最終話。読み終えたとき我々は体験する。恐怖というものが、その身に迫っていることに気づく。

本作は、岩井志麻子の『ぼっけえ、きょうてえ』を彷彿とさせる優れた短編だ。「妖怪」という日本に土着しているコンテンツに、現代的なリアリズムに照らして語り進められている。ゆえに、描かれる恐怖は真に迫り、その描写は読者の脳裏にこびりつく。

まったく、はた迷惑な作品だ。だが、大好きだ。恐怖小説はこうでなくてはいけない。こんな小説を他にも読んでみたい。妖怪をテーマにした、現代的な怪談を読んでみたい。

本として。一冊にまとめ上げられた作品として読んでみたいと、そう思わせる一編だった。

★★★ Excellent!!!

長年使ってきた物には愛着がわくけど、自分が使っていた物でないとそうではない?

家宝とまでなっていた屏風だけど、それがなんだか恐ろしくて―― 

古い家にやってきた屏風をめぐる奇妙な出来事。
それは妖怪のしわざなのか、ただの偶然か。

ゾワリとして後に怖さが残るホラーです。

★★★ Excellent!!!

一人称の体験談による物語は、リアリティーラインを引き上げる効果があります
この作品はそれが巧みです
それは物語をより恐ろしく、何より語り手の息づかいまで感じるような臨場感を演出しています
読者の嫌な胸騒ぎが最高潮に高まったところで、語り手が距離を詰めてきた時の恐怖を是非味わってください
オススメです

★★★ Excellent!!!

妖怪とはいったい如何なるものであろうか?
そんな深淵の底をのぞき込むがごとき、本質に迫る恐怖譚です。
「屏風のぞき」なる高名とは言い難い妖怪をテーマとして、ただ屏風の向こうから覗き込むだの妖怪の話で、恐らくは鳥山石燕が残した妖怪画から着想を得て……ここまで掘り下げた話が作れるとは、素晴らしいの一言です。

柳田邦男先生はこう語っています。
「妖怪とは零落した神である」と。
しかし、それでは猫又はどうなのか。元は人間だったものが妖怪化したものだってあるのではないか。そう疑問を抱かれた方もいらっしゃることでしょう。
しかし、それは解釈の違いというものなのです。先生のおっしゃりたかった事は恐らく「信じる心」信仰心についてなのです。
たとえ一枚の屏風に過ぎずとも、しかるべき手順を踏めば妖怪に至る。この作品を読めばそれが納得できるのではないかと思います。

妖怪好きであれば是非!