(4)怪談篇2

 終電に乗って帰宅中、突然、変な音と共に電車が止まった。

『異常を確認しましたので、急停車いたしました。申し訳ございませんが、しばらくお待ち下さい。詳しい状況が判り次第、運転再開の見込み時間を連絡いたします』

 車内放送が、そう告げた。

 明日も仕事なのに困ったものだ。

「申し訳ありません。お客様の中に、昼間に当社から連絡してもよろしい方は居らっしゃいますでしょうか?」

 車掌が、この車両にやって来てそう言った。

「事故ですか?」

 私は車掌に、そう聞いた。

「ええ……人身のようで……」

「またですか?」

「申し訳ありません」

「いや、仕方ありませんよ……」

 どうやら、地獄で受ける刑罰も、地獄に堕ちるかどうかの規準も、私が生きている頃に想像していたものとは、かなり違っていたようだ。

 もっとも、生きている時は、地獄が実在するなど本気で信じては居なかったが。

 会社人間だった私は、休む暇も気晴らしもする時間もなく、延々と会社での仕事を続け、自殺した誰かは、延々と電車に轢き殺され続ける。

 そう言えば、この車掌は、どうして、この地獄に堕ちたのだろう?

 それとも、私のような元人間ではなく、地獄の獄卒おにのようなモノなのだろうか?

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終電での事故 @HasumiChouji

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