雲の流れ

門前払 勝無

今、目の前にあるものは…

 今、目の前にあるものはなんですか?ー。


 テレビの中で見た目が同じのアイドルグループが踊っている。

 コンビニの弁当が冷めていき、星は今にも消えそうな光を保っている。ひびだらけのハートの目地にボンドを塗り込みギリギリに抑えている。大型車が通る度に生暖かい排気ガスが俺を包む、オレンジの街灯が足元を照らしている。

「あと少しだけ、あと少しだけ…生きてみる」

微かな希望だけを持っている。99%の諦めと1%の望みをボウフラが輝く運河に抱くー。


 夜勤長の冷たい目線を「辞めちまえ!」と感じて、朝方、電車に乗り込んだ。

 車窓に流れる景色はビルを通り過ぎて人々の営みが 少なくなっていく……。


 城跡の広場の片隅のベンチに座り、大量の風邪薬を南アルプスの天然水で大量に飲み干した。ロキソニンの痛み止めも大量に飲み干した。

 そのままベンチに横たわり、目を閉じたー。


 悲しそうに俯く母を見ている。

 教科書を忘れただけで鬼の形相で怒り狂う担任が怒鳴っている。

 祖父の家の近くの運河を橋の上から覗いている。

 祖父の後を着いていき人混みの中で打ち上げ花火を眺めている。

 兄が母を殴っている。

 


 強く輝く星もある。弱く光る星もある。一度折れたら枯れてしまう花もある。何度踏まれても立ち上がる雑草もある。


 太く逞しく天を目指して伸びてゆきたい。しかし、その度に蔦が絡んでくる。その蔦が俺の栄養素を抜き取って行く、そして枯れて折れてしまう。その度に種からまた伸ばしていくー。

 時の流れが速くてもう少し緩やかに過ごしていきたいー。

 もう少しゆっくりとそよ風に揺られて生きていきたいー。


 おかしいー。

 永遠の眠りにつくつもりが、理想を考察したら目が覚めてしまった。

 頭がクラクラするが目が覚めている。ダイドーの自販機でジュースを買ってゆっくりとゆっくりと歩きながら元来た道を帰る。

 何故か曇っていた空が晴れていて、小さな雲が微笑みながら浮いていた。

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雲の流れ 門前払 勝無 @kaburemono

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