それは確かに異能ではあるが、万能ではない。

涼やかな顔立ちと少々マイペースにも見える青年・戸谷は、施設から抜け出し生きる逃走者だ。
そんな彼に協力を依頼したのは才女であり頼もしくも格好良い、それでも少女である謠子。
賢く無茶をしがちな謠子を信頼し振り回される戸谷、謠子のサポートをしながら見守る平田。
三人のかけあいは軽快だが、事件はどんどんと進んでいく――
小説の紹介文にあるように、“ちょっと不思議な力を持つだけの、普通の人間”である彼らが事件と関わり向き合う姿が格好いい作品です。
能力の高さによる距離感、それでいてそれは少しの違いでしかなく、しかし事件を作るような異でもある。
普通の人間である彼らが動き出すことで見える事件の全容、助手視点だからこその事件の見え方。
テンポ良くドラマのように進むクライムサスペンス。
魅力的なキャラクターと事件の面白さがお薦めの作品です。