こういうのが読みたかった

魔法という超常の技を扱える少数派の“魔法使い”と、それを使えない多数派の“一般人”が暮らす現代の英国。
秘密主義・神秘主義である魔法使いは一般人と一線を引くのが暗黙の了解だが、主人公のアーチボルトは魔法使いでありながら一般人達からの魔法絡みの依頼を請けるフリーランスである。
一人で大抵のことはこなせる高い能力と技術を持つ一方、そのスタンスから魔法界では良くも悪くも目を付けられている彼の元にある日放り込まれたのは、諸事情で停学処分を食らった3人の“問題児”だった――。


英国×現代×魔法!!

ネット小説は異世界が圧倒的にシェアを占めているため、まず海外が舞台の小説を捜すのが地味に大変で……そこからスタンダードな魔法ものを発掘するのは更に大変で……そんな地道な努力の末見つけた本作、とっても面白かったです。

まずイギリス(海外)感を強く感じる言い回しが良い。地の文もキャラの台詞も魔法の呪文も一つ一つがウィットとユーモア溢れていてお洒落だし、何より言葉選びがとても海外文学っぽくて個人的にも非常に好みです。

次にキャラクター。
主人公のアーチボルトは吸血鬼も狼男も単身で相手取れる凄腕の魔法使いであり、母校では「最高の問題児」とも呼ばれているキャラ。敬語で話すけど毒舌も皮肉も遺憾なく振るい、荒事には冷静に対処するけれど何事にも負けず嫌いな一面もあり、とギャップ好きな方にはたまらない魅力を持っています。そんな彼が突然預かることになった少年達に、自立した大人として物事を説きながら対等な目線で接する姿、滅茶苦茶良い。
そして後継(?)の問題児としてアーチの元に預けられた3人の学生達……優しくて感受性が強いアーネスト、斜に構えたブレーン担当のヴィンセント、周囲に振り回されやすくもおっとりしたところがあるダニエル。個性豊かで何やら抱えているものはあるものの、一時的に師弟関係になったアーチを素直に慕っていく様子、滅茶苦茶可愛い……!

そしてそして、アーネスト達が目撃した事件をきっかけに始まる4人のストーリーとその描写がもう純粋に面白いに尽きます。
魔法界と人間界の微妙な均衡、繊細で大胆な魔法のシーン、しっかりと張られている伏線、ゆっくりと変わり始める人間関係、軽快な会話劇と緊迫感ある戦闘シーン、繰り返しになりますがどれを取っても本当に面白くて、次へ次へと読み進める手が止まりませんでした。もう本当に……好きです! 好きにならない要素がない!

レビューというより一感想になってしまいましたが、一言紹介の通り「こういうのが読みたかった」を求める人はきっと他にもいらっしゃると思うので、あらすじでピンと来られたら是非読んでみてください。

素敵な物語を書いてくださりありがとうございました。

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