フィン民主国の人口の9割は魔法使いが占める。
ほとんどの国民が大なり小なり魔法を使えるし、たとえ能力が無い者でも身の回りには魔法陣を用いるアイテムが溢れており、日常生活にも密接に絡まっていることは至極普通だと思っている。
そしてそれほど根付いているならば当然起こりえる。小さな悪戯も、国一つ揺るがすほどの大規模犯罪の発端にも魔法が使われることは――。
時々目にする「魔法が存在するファンタジー世界観で推理ものは書けるのか?」。
答え自体はシンプルに「YES」ですが、注釈に「※とことん作り込めば」と添えなければいけないと、書き手はもちろん読み手側も自然と考えてしまうくらい難度は高いです。
しかし本作は綿密な魔法使用への法律・規制設定(地味ながらも一番練らなきゃいけない土台)を基に、火や水、転移、加速、音響等々のバリエーション豊かな魔法で、些細な過ちから国家規模の事件まで様々な事件を見事なまでに書き切っています。凄い。しかも現実の推理小説にもありそうなやトリックや現象も混ぜ合わせて説得力を持たせているのが更に凄い。
牛とドーナツの回と戦車のくだりがお気に入りです。
それとこの小説、毎話必ず食べ物が出てくるので推理で頭を使う+時に挟まれる食レポのダブル効果でお腹が空きます。ホットサンド食べたくなる。
それとそれと、登場人物もW主人公の男女双子を筆頭にキャラ立ちしていて誰が事件の主軸になっても楽しく、掘り下げ回が来るとわくわく感がアップします。
個人的には主人公リコリーとアリトラを含めたセルバドス一族が好きですね。全員登場するのは割と遅めですが皆さん個性がお強くて、けど全員共通で双子達には甘いのが良いです。
物事の構成要素もストーリーもきっちり料理された、美味しいもの詰め合わせ&盛りだくさん本作。
近況ノートでは第3部で『一旦』完結とのこと。構成考えるの絶対大変なのは理解の上で、続きが出たら嬉しいです。
魔法が存在する世界で、仲の良い双子が謎解きに奔走する話です。
魔法はありますが、魔法理論がきちんと組んであるので、突然未知の魔法が出現して理不尽な真実を明かされることもなく、双子の推理で筋道だった解説が入るので、読後感が良いです。
事件内容も、いたずらやいやがらせなどの軽いものから、国家規模の大きな事件の末端であるなどバリエーション豊かで飽きさせません。
レビューを書こうにも、うっかり忘れて読みふけってしまう程の、強力な吸引力があります。
見所は、双子の仲の良さでしょうか。胃袋から掌握される辺りがたまりません。双子の可愛さには劣りますが、ミソギさんとカレードさんお二人の掛け合いも秀逸なのでお見逃しなく。