自分の価値を見つけたとき、灰色の世界が色づいていく

病気のせいで太っているタカシ。走るのもピアノも苦手。取り柄がないから勉強するしかない。だからボクは勉強しかできない。そんな劣等感のかたまりのような少年の前に突如現れた「軍師」によって、灰色だったボクの世界は少しずつ色づき始めます。
軍師は直接何かをしてくれるわけではありません。タカシの本音を導き出し、自分がどう動けるかを考えさせてくれる存在です。ただ与えるのではなく子どもが自ら発見することを見守りそれを肯定する大人像が、このキャラクターに投影されているように感じます。
家族や他人の心に触れることで、今まで見えていなかったことが見えてきたり、世の中がひとつの視点や価値観でまとめられることはないと気づいたり。うわべの綺麗さではなく、中に隠れているものの価値を見つけてくれる人がちゃんといたり。
笑いを誘うエピソードの中に色んな発見が込められています。
読んでいるといつの間にかタカシ君を応援したくなることでしょう。あたたかく力強い手で心を後押ししてくれるような物語です。

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