小学6年生のタカシは、自分の容姿にコンプレックスがある男の子です。
さらに両親には、優秀な兄と比べられてしまい、強い劣等感を抱えていました。
家族のギスギスとした関係にも居心地の悪さを感じ、タカシは次第に、部屋にこもって勉強ばかりするように。
そんなある日、タカシは大好きな伯父のお見舞いに行きます。すると「見守ってくれるから」と言われ、伯父から壺を譲り受けますが、それは普通の壺ではありませんでした。
壺から現れたのは、自分は軍師だと言う怪異。初めは戸惑うタカシでしたが、2人は次第に心を通わせるようになります。
この物語の魅力は、小学生の主人公と、軍師である怪異が出会い、
「勉強しかできない」と、自分の殻に閉じこもっていた主人公が、どう変わって行くのか、だと思います。思春期の1番難しい時期に、誰とどう関わるか、はとても大切なことで、その出会いで人生が左右されることも。
タカシは軍師と出会ったことで、今まで暗かった世界が、色鮮やかに見えてくるようになります。その過程が、とても素敵な内容だと思いました。
小学生から大人まで、全ての世代の方に読んで欲しい物語です。
病気のせいで太っているタカシ。走るのもピアノも苦手。取り柄がないから勉強するしかない。だからボクは勉強しかできない。そんな劣等感のかたまりのような少年の前に突如現れた「軍師」によって、灰色だったボクの世界は少しずつ色づき始めます。
軍師は直接何かをしてくれるわけではありません。タカシの本音を導き出し、自分がどう動けるかを考えさせてくれる存在です。ただ与えるのではなく子どもが自ら発見することを見守りそれを肯定する大人像が、このキャラクターに投影されているように感じます。
家族や他人の心に触れることで、今まで見えていなかったことが見えてきたり、世の中がひとつの視点や価値観でまとめられることはないと気づいたり。うわべの綺麗さではなく、中に隠れているものの価値を見つけてくれる人がちゃんといたり。
笑いを誘うエピソードの中に色んな発見が込められています。
読んでいるといつの間にかタカシ君を応援したくなることでしょう。あたたかく力強い手で心を後押ししてくれるような物語です。
母親からは兄と比べられて否定され、学校では見た目のことで馬鹿にされる。だから「勉強くらいしかできない」と、自己肯定感を持てずに生きていたタカシ。
彼の目の前に現れたユンジュンは、そんな思い込みの枷を外してくれます。
一番大事な家族のこと。
友達のこと。恋愛のこと。
どの点をとっても、物事の価値基準は一つきりではありません。
お母さんも悩んでいるかもしれない。
男の人の恋人が男の人だってこともあるかもしれない。
見た目が優れていても、中身はそうではないかもしれない。
ユンジュンの助言を得て、タカシは自ら行動できるようになります。
自分のためではなく、周りの人のために。
それはもともと、彼自身が持っていた優しさが進化したものでしょう。
タカシが動こうとする時、周囲の大人やそれに準ずる存在が手を差し伸べてくれました。
子供だけで全てを解決するのは難しいけれど、その心を汲んで力を添えてくれる誰かが近くにいることが、すごく良いなと思いました。
現実もそうであったら良いな、と。
思春期に入り始めた少年少女に触れてほしい、いろいろな「価値観」の詰まった物語です。
タカシは勉強熱心な小学六年生。
あるとき大好きな叔父から大切なツボを渡されて……。
最初は病気のために太っているタカシ。
軍師ユンジュンとの出会い、家族の問題解決、中学受験……と様々な経験を積むうちに、体もスリムで丈夫になり、心も大きく成長していく様子がとても微笑ましいです。
兄のハヤテも魅力的ですし、一緒にユンジュンをあるべき場所へと考えて行動する二人の姿がとても素敵。
このレビューは第23話読了時点で、一旦ユンジュンと別れるシーンですが、じんわりといつか訪れるかもしれない未来を思うと胸が締め付けられる思いです。
朝読小説賞へエントリーされていますが、ぴったりだと思います。
どんな結末になり、そのときタカシたちはさらにどう成長しているのか見守っていきたいです。
執筆がんばってください。^-^