第24話 魔法少女は恋を知る。
アリスは悶々としていた。
フィオネと店長が一緒に居て、顔を赤らめているのを見て、何か気付いたからだ。
ただ、その何かが解らない。
そんな様子を魔法同好会の部室でずっと見ているみのり。
「ふむ・・・集中が出来ない」
アリスは悶々としながら、魔法を発動させようとしたが、不発に終わる。
「会長!何か悩み事があるのですか?」
みのりの質問にアリスは困惑する。
「うぅ・・・その・・・なんだな」
モジモジしながら答え難そうなアリスにみのりは更なる追い込みを掛ける。
「恋愛ですか!?」
「恋愛だと・・・恋愛・・・そうか。あれはそうなのだな」
「会長・・・誰かに恋をしたのですか?まさか・・・同居されている・・・」
「言うな。違う。断じて違う。昨日、偶然、知り合いが男と一緒に居るところを見て、あれは何だったのかと思っていただけだ」
「はぁ・・・それはデートじゃないですか?」
「そうだな。そうらしいな」
「会長は恋愛経験が無いのですか?」
「うっ!ごはぁ」
アリスは何かに撃たれたようにその場に突っ伏す。
「会長!会長!傷は浅いですよ」
駆け寄るみのり。
「きょ、今日はこれで終わりだ。片付けて帰るぞ」
アリスのHPは限りなくゼロになり掛けていた。
帰り道、みのりと別れたアリスは呆然と昨日の事を思う。
「そうか。あれがデートか・・・」
家に戻ると、先に帰宅していた隆が居た。
「お帰り」
ニコリと笑顔を浮かべた隆を見た瞬間、アリスは顔を赤らめる。
「う・・・うん」
「どうしたの?なんか声が出てないけど」
「うるさい。何でもない」
「今日はハンバーグだよ」
「ハンバーグ・・・そう。食べる」
「手を洗ってきて」
隆に言われて、アリスは洗面台へと向かう。
手を洗っている時、鏡を見たアリスの顔は真っ赤であった。
「どうなってるの・・・」
隆を見て、赤くなる。
隆を意識している。
どうして?
アリスは長い時間を過ごした。
千年に及ぶ時間。
だが、そのほとんどは魔法の研究に費やされた。
ある意味では人としての生活はしていなかった。
食べて、排せつして、寝る。
それ以外は全てを研究に費やした。
だから、恋愛なんてのは気にすることも無かった。
だけど、この数か月。
隆と出会い、一緒に過ごしてきた。
その僅かな時間がとても大切に思えている。
「まさか・・・これが恋なのか?」
そう口にした時、胸が締め付けられる。
「私は一体・・・」
千年の時を生きた大魔法使いは今、その長い年月さえ無駄だったと思わせる程に動揺して、とても複雑な心境に陥っていた。
そうとは知らず、隆は呑気にハンバーグに掛けるデミグラスソースをかき回していた。
魔法少女は異世界から来訪しました。 三八式物書機 @Mpochi
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