〇〇

「どうだった? 初めてのマーダーミステリー」

 帰り際、加奈が私に訊いてきた。

「うん。楽しかったよ。もうしばらくはやりたくないけど」

「え、なんでなんで?」

「やっぱり人見知りには荷が重い」

 そう言いながら、でも私はポジティブな笑顔を加奈に向けた。

 二人で雑談しながら、マーダーミステリーの専門店から出ようとする。

 その時。

「キャアアアアァァ!!」

 甲高い叫び声が響いた。

 えっ、なになに?

 その場で立ち竦んでいると、私たちのいる喫茶店スペースに必死の形相で六条さんが駆け込んできた。

 それからすぐに他の面々も集まってくる。

「どうしたんですか?」林田さんが六条さんに尋ねた。おそらく先ほどの叫び声は六条さんのものだ。

 尋ねられた六条さんは百メートルを全力疾走してきたかのように息を弾ませている。

 しばらく息を整えたのち、彼女はこう言った。

「死んでる」

「えっ?」

「喫茶店のマスターのフユミさんが」

 私の脳裏に休憩時間にここで見た美人女性のビジュアルが浮かび上がる。

「刃物で刺されたみたいな痕があって。きっと誰かが殺したんだ」

 私の背筋をぞくぞくっとした悪寒が舐めていった。

 六条さんが鋭い目つきで周りを一瞥する。

 そしてこう言った。

「犯人は、この中にいる!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

入門! マーダーミステリーに挑戦してみたら〇〇 さかたいった @chocoblack

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ