エンターテイメントの要素が沢山詰まっていて、楽しく読めました。
描写が巧みで、映像的です。設定もしっかりしていて、説明も的確ですんなりと頭に入りました。世界観の構築に破綻がなく、その世界があると思わせるリアリティを感じさせてくれます。
何より、キャラクターが際立っていますね。義理人情に厚い主人公の巽、無邪気で好奇心旺盛なアトリ、アクティブでクールだけど献身的なヒロインのサイカ。配管工ブラザーズもキャッチーで面白かったです!
最後まで読み進めると、テーマも浮かび上がってきますね。人それぞれ受け止め方は違うと思いますが、先の見えないこの御時世にはぴったりの、読むと前向きになれる小説でした。
有限会社巽運送の二代目社長兼長距離ドライバーの巽 晃一(41)はちょっとした親切心から大きなトラブルに巻き込まれてしまいます。
詳しくはお読みいただくとして、見どころは何と言っても巽の男気。
退くチャンスは何度もあったのに、敢然と巨悪に立ち向かいます。
その理由も実に納得できるし泣けます。
登場人物も全員が魅力的。
可愛い男の子アトリ。
ヒロインのサイカ。
敵役に配管工ブラザーズ。
それぞれに見せ場があります。
迫力あるカーチェイス、二転三転する展開、銃撃戦などは正しくハリウッド映画のよう。
親子愛、人情、男気がたっぷり詰まったこの『トラッカーズ・ハイ』。
ひたすら熱くて温かいです。
いつもの配送ルートで、立ち往生している車に気づいてブレーキを踏んだ大型トラックのドライバー巽。彼は困っている様子のサイカという美女を助けてあげることにした。それは彼女が美人だったからではない。そんなことは断じてない。
だが、それが大きな間違いだった。
彼女に言われるまま荷物を取りに行った巽は、その荷物が幼い男の子であり、自分がなにやら犯罪の匂いがする行為に加担させられていることに気づく。
そして、サイカという美女は彼に銃を突き付けて、こう言うのだ。
「騒いだら撃つ」
彼女に脅され、荷物である男の子を運ぶことになる巽。だが、ほどなく追手がかかり……。
トラック・ドライバーのおっさんと訳あり美女、そして可愛らしい男の子の三人が、福島から九州、そしてふたたび福島へと長距離の呉越同舟。そんな彼らを追う敵はなにやら強大で、実力行使も厭わない。おまけに拳銃も所持している。
最初は脅されてしぶしぶ従っていた巽だが、美女の事情と男の子の状況を知るうちにだんだんと彼らをなんとかしてあげたいと思うようになるのだが。
世の中にはどうにもならないことがたくさんある。そんなことを山ほど経験してきた巽。そのどうにもならないことに抗い、無茶をしているサイカ。そして、何やらその存在自体に秘密がある男の子アトリ。
訳あり過去あり事情ありの三人を乗せてトラックは行く。
どうにもならないことを承知で、それでも前に進むしかないおっさんトラッカーと、運命に抗うように突っ張る訳あり美女。
やがて惹かれ合う2人ですが、まるで遠く離れて光と影を投げ合う地球と月のように、互いに輪を描きつつもその距離は決して縮まりません。
彼らは過酷な運命に飲み込まれようとしている幼い少年を救うことができるのか。爆音をあげて突き進む先に、明るい未来はあるのか。
その道の先にある景色はきっと、走り続けてみなければ目にすることはできないものなのでしょう。
軽快に走る大型トラックの、爆音と振動に味付けされたロードムービーのような小説です。
たったの十年後。とても身近な未来のお話。
主人公『巽』は長距離のトラッカー。中年ゆえか、何だか疲れた様子。明るい性格のようで、どこか諦めのような陰があって。でも美人に弱い、典型的なオッサン。
いつもの仕事も突発の仕事も、運送業にはままある。けれども拾ったのは、出会ったことのない危険なタイプの美人『サイカ』。
彼女に脅され、予定外の長距離運送を務めることに。
巽はいい人です。命も含めた自分の都合を考慮しながらも、相手の事情を汲んで優先してしまう。押し切られてしまうタイプなのかも。
サイカは熱く、一途な人。自分が納得したことは、徹底的に貫こうとする。目的は決して利己的でなく、守りたいものの為。
強力かつ手段を選ばない妨害が、二人を襲う。しがないトラッカーが敵うはずもない、強大な相手。
いつしか巽は、サイカとその望みを守りたいと思う。
だが知れば知るほど、解決方法が存在しないことを思い知る。
サイカの望みは、失われてしまうのか……?
◇◇◇
巽とサイカは全く違うタイプです。でも根本で同じ部分がある。それは誰かを犠牲にするくらいなら、自分を殺してしまうこと。
それは美徳であるけれど、救いの手を跳ね除ける行為。実際その為に、何度も頓挫してしまいます。
でももう一つ、共通することが。
大切な誰かの為なら、何だってやれる。サイカのそれはとても狭く、巽はとても広い。
打ち勝つとすれば、きっとこの想いでしょう。サイカさえも、やられてしまうくらいだから。
やきもきします。
それはもう、やきもきします。
大型車と黒塗りセダンのカーチェイス。ハッタリあり、銃撃もありの逃走劇。追い詰められた巽の生還する様は、傷だらけのヒーローと呼ぶに相応しい。
ハリウッドばりのアクションと駆け引きの末に、望みは果たせるや否や。
一つ言えるとすれば。巽運送のトラックは、荷主の希望を叶える日本一のトラックです、ということ。
どこにでも居るオッサンがヒーローになる様は、とても胸を温かくさせられました。
※注:現実には後退もできるので、ご安心を。
トラッカーこと「巽運送」社長、巽晃一。
いつも通り荷運びの途中。
何者かに追われる謎の美女を拾うという、映画さながらのイベントに出くわすが、彼女が持ち込んだ「荷物」が曰く付きで……??
ちょっととぼけた所もあるけれど、根っこに辛い過去や運送屋としての矜持を抱える巽のキャラクターが、とても共感できて応援したくなります。
謎の美女・サイカと、彼女が持ち込んだ、否、連れてきた男児・アトリには、逃げなければならない深い事情が。
それらの事情に寄り添って、中年の体フルパワーで奮闘する巽。
どこにでもいそうな、社会の歯車の一つだけど、いざという時には歯車から外れて漢を貫くことだってできるんだぜ!
たくさんのことを教えてくれる、普通なおじさん・巽がカッコいいのです。
ワクワクするような数々の事件と、人との出逢いがもたらすかけがえのない大きな輪。
運送トラックが、今すぐあなたのもとへお届けします!
トラック運転手として働く主人公の前に、謎の美女が大きな荷物をもって現れる。美女は主人公を銃で脅し、荷物を運び、病院に連れて行くように命じる。しかしその途中、荷物の中身が子供であることが判明し、三人で病院を目指すことに。
しかし、休憩中に黒服の男たちから襲撃を受け、三人は逃げることとなる。実は美女は研究所で「先生」と呼ばれ、子供たちの教育係をしていたのだ。そして、そのうちの子供の一人を救うために、無断でこの子供を連れだしていた。研究所ではこの子供から、臓器を摘出して他の子供に移植する計画があったのだ。
何とか病院に着き、美女は姉に助けを求めるが、姉は自分の子供を人質に取られており、美女を助けてはくれなかった。この美女姉妹の父親は、研究所の高い地位にいたため、美女は父親と直接対決する。研究所を体現するような父親と、それに背く娘。この対立は果たして―—?
そして主人公にも研究所から黒服の男たちがやってきて……。
訳アリ独身主人公は、美女と子供を助けることはできるのか?
主人公の過去と、美女の柔らかな部分、そして無邪気な子供という設定が、まさしく「家族」を連想させ、物語に深みを与えている。特に、「冷徹な美女」と子供に優しい「先生」であり「聖母」のような面と、「妹」、「娘」の面を見せる美女が、とても魅力的だった。子供も天真爛漫で、とても愛らしかった。
是非、是非、御一読下さい!
クールビューティの美女と子ども一人。とんでもない「荷物」を運ぶことになってしまった41歳のトラッカーが、ハリウッド顔負けのアクションシーンを切り抜けながら走り続けるという、まさに映画のような物語。
章ごとに区切られたエピソードには、SFありカーチェイスありとふんだんにエンタメ要素が詰まっています。が、その根底を支えるのはやっぱりキャラクターの持つ魅力です。
中年トラックドライバーの男っぽい不器用さや過去を背負って生きる哀愁。気の強そうな美女が時折見せるはかなげな横顔と旺盛な食欲。そんな二人のアンバランスな会話劇は楽しく、切なく、自分に誠実に生きようとする大人のヒューマンドラマとしての側面も見せてくれます。
逃亡劇とともに描かれる大人のボーイ・ミーツ・ガールもポイントです。近づきそうで近づけない二人の行方を読者はきっと見守りたくなることでしょう。
4日間の出来事とは思えないほど色んな要素がギュッと詰まった読み応えある物語。ぜひこのロードムービーを味わって頂きたいと思います。
配送業を営む社長兼トラックドライバーの巽。
いつもの得意先へ荷物を配送する道中で、美女サイカと出会い……。
まず、医療従事者に並び、新型コロナで大変な中、物流を守ってくださるトラッカーの皆様にも感謝を伝えたいです。
この連載を追いながら、ずっと心の中にその想いがありました。
本当にありがとうございます。
さて、レビューです。^-^
非人道的人体実験を行っている「ふくしま特別研究都市」からサイカが連れ出したアトリ。
純粋無垢な少年で、外見も性格もとても可愛らしく、九州に向かうトラックでの旅ではどんどん巽に懐いていくので、この子が犠牲になる末来なんて絶対に許せない……そう思いながら読んでいました。
研究施設から追ってくる黒ずくめの男二人はどこかコミカルで、そしてもしかしたらこの二人こそハリウッド映画並みなのではないかと思うくらい、しつこい。
もう、しつこすぎ・笑。
主人公巽とヒロインであるサイカはお互い辛い過去を背負っており、この濃厚な4日間でそれらが理解されていく道程がとても自然で……どうか二人が離れなくて良い形の結末を向かえるようにと祈ってやみませんでした。
そして、文章に定評のある作者様。
やはり最初から最後まで流れるような文体で、とても読みやすく安定しています。
拝読の度に語彙の豊富さ、感情表現の多彩さ、さまざまな技巧に唸らされ……本当に勉強させていただいております。
一気読みをおススメしたいこの作品。
ハリウッド映画の原作にどうでしょうか!ヽ(^。^)ノ
重い過去を背負ったトラッカーのおっさんが美女を拾い、騒動に巻き込まれながらも前へと進んでゆく物語です。
他の方のコメントやレビューにあるように臨場感あふれるアクションや中年トラッカー巽と美女サイカのやりとりはもちろん面白いですが、私はこの物語は子供たちを見つめる事により、再生される大人たちのカッコよさにあると感じています。
ネタバレを避ける為、詳しくは書きませんが、男よりもカッコいい『ハンサムガール』サイカと、一本筋の通った『トラッカーおやじ』巽の旅路を追いかけてみて下さい。
そして、物語を読み終わった時に巽が運び続けていた荷とこれから進む道が何処へ続いているかを感じてみましょう。
読みやすく、整理された文章と構成の為、一気に読めるのもポイントです。
しがない長距離トラック運転手の巽が、配送の途中、出逢ったのは、車が故障して困っている美女・サイカ。
ちょうど配送先である『ふくしま特別研究都市』まで乗せていってほしいという彼女のお願いを聞いたのが、すべての始まり。
荷物が入っているとばかり思っていたトランクから、男の子が出てくるわ、脅されるわ、追っ手に追いかけられるわ……。
「ハリウッドでやってくれよ!」
そう叫びながらも、ひたすらトラックを走らせる巽の運命や如何に――!?
いつもながら、情景が見えるかのような丁寧な筆致で描かれた、アクションあり、ほのぼのあり、涙ありの物語です。
何度、目頭が熱くなったか……(´A`*)・゚。
重い過去が見え隠れする巽、自分の信じる道を貫こうと足掻くサイカ、癒されずにはいられない無邪気な少年・アトリ……。
三人が乗るトラックは、いったいどこへ辿り着くのか。
ぜひぜひ見守ってください!
有限会社巽運送の二代目社長・巽 晃一(41歳)は、取引先『ふくしま特別研究都市』へ向かう高速道のパーキングエリアで、細身の小気味のいい美女に声をかけられた。
「すみません、ちょっと手を貸していただけませんか?」
「えぇ、もちろんです」
これが全ての間違いだった!
脅迫されたり絆されたりしながら、気づけば国家機密を抱えた美女と少年を乗せて、トラックで福島から名古屋を経由して北九州へ、北九州からまた福島へ。列島半分を往復する逃走劇の果てに、彼らが得たものは――
ポスト・コロナ後の日本人に期待される将来像と、生命研究の倫理と、大人のロマンスと、ハリウッドばりのトラック・アクションを含んだ、近未来SFヒューマンドラマです。
巽さん、頑張ってv(41歳はまだ若いゾ)
思いもよらぬ新型ウィルス蔓延により、出生率が激減した近未来を舞台に、ハリウッド映画も真っ青のカーチェイスと人間ドラマが繰り広げられる世界です。
トラックドライバーの巽は曲がったことが大キライな実直な性格の壮年男性。
彼は、美女・サイカに銃を突きつけられ、或る事情で生命を危惧される幼き少年・アトリを守るべく、トラックを走らせます。
道中は平穏とは程遠く、謎の追っ手に邪魔をされながらも、物語の中間地点で、危機一髪を潜り抜けました。
無事、目的地に辿り着き、ほっとしたのも束の間、新たな局面を迎えます。
読者は、登場人物各々の過去を知り、新たな想いに充たされます。
巻き込まれた形で始まった旅を中途半端にしておけない巽にエールを贈ります。
「がんばってください!!」
中年トラックドライバー、巽。この日の仕事は、とある研究施設への配送業務。なにも特別な事はなく、決められた仕事をこなすだけ。そのはずでした。
しかし、ふとしたことからサイカという美人女性を乗せたことで彼の平穏は終わりを迎えます。
荷台に積んだケースから出てきた少年、アトリに、突きつけられる銃口。更には研究施設の抱える闇の部分を知り、最終的には彼女達と行動を共にすることに。
本作、キャッチコピーが非常に秀逸。
『こういうのはハリウッドでやってくれ! 頼むから!』
この言葉に違わず、どんな大作映画だと思うようなピンチやアクションの連続。そして主人公は、それに巻き込まれる一介のトラック運転手。
いくらなんでも荷が重いこの事態。無事、ハッピーエンドへと走り抜けることができるのでしょうか?
そしてアクションと共に本作の要になっているのが、親子や命といった、心に訴えかけてくる愛情たっぷりのドラマ性です。
サイカの目的。そしてその根底にある思いを知った時、巽と同じように、彼女を応援せずにはいられませんでした。
『めぐりの星の迷い子たち』を目にして以来、陽澄すずめ様の作品はなるべく追い続けるようにしています。前作『レアメタリック・マミィ!』では戦うシンママという斬新な主人公でしたが、今回は傍目にはくたびれ気味の、気のいいおっさん。転生して若返ったりしない、チート能力なんて当然ない、咥え煙草でハンドルを握るトラック運転手のおっさん。もちろん誰かを撥ねて転生させることもありません。
撥ねる代わり(?)におっさんが拾ったのは、謎めいた翳のある美女と、純真無垢の固まりのような少年。それだけでもドラマになるところ、ブルースブラザーズみたいな凸凹コンビに追いかけまわされたり。トラックを乗り回すカーチェイスから、サスペンスにハートフルにもしかしたらロマンスまで、まさしく文字で読むハリウッド二時間映画。
物語はちょうど今、これから佳境を迎えようというところ。謎ありアクションあり人情ありの陽澄ワールドを、是非あなたも味わってください!
舞台は近未来の日本。
長距離トラックの運転手として働く男性、巽晃一41歳。彼はこの日も、いつも通り荷物を運ぶ……はずだった。
しかし配送中、車が故障して困っている美女を助けた事から状況が一転。彼は思わぬトラブルに巻き込まれていく。
銃を突きつけられたり、怪しい奴等に追いかけられたり。巽を襲う、様々な危機の数々。
女性を助けただけのはずが、どうやらとんでもない事に首を突っ込んでしまったみたいです。いったい彼女は、どんな事情を抱えているのか。
所詮は赤の他人。面倒事になんて、巻き込まれたくない。しかしそれでも放っておくことのできない、心根の優しい巽。
人間くささと人情溢れるトラックドライバーの奮闘を、是非ご覧ください。