若葉のような少年期の恋を思い出しながら

『虹色の約束。時を超えて~」の32話までの感想とレビューです。
 
 この物語は柚月と幼馴染で父が死んでからは感情表現を押さえるようになった廉を中心に描かれています。恋に恋するような柚月の視点で紡ぎだされていくその内容は、少年期を過ぎた読者には、好きになるってどういうことだろう?と理詰めで考えたり、感覚でのりきったりした往時を思い出して胸がざわめくかもしれません。柚月は自然体で恋愛を受け止めるのではなく、不器用にドタバタと苦悩するのですが、しかし新芽のように鮮やかに、そして力強く、恋に対して正面からぶつかっていきます。こういう恋はこの年齢でないとできないのでしょう、彼女の姿を眩しく思うのは私だけではないはずです。また、話の内容として、23話の廉の思いつめた描写が特に印象に残っています。大人であれば日々の生活や経験、諦観から乗り越えられるものかもしれませんが、自分がもしその時の年齢でその環境だったら、恋や家族に対してどのような距離をとれるのか考えさせられるものでした。また、成長する半面、折れやすい時期の子供たちの感情の揺れ幅を巧みに表現していると感じた話でもありました。
 最後に子供たちを見守る大人の言動に読み手として共感しながら、あるいは自分が言いたい言葉を彼らに代言してもらいながら、柚月がどのような花を咲かせるのかとても楽しみに読み進めています。

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