第4話
「まずステータスをお作りしたいので、その服は脱いでください」
そう言われ、俺は意味が分からなかった。ステータスってなんか手をかざしたら表示されるとかそう言う奴じゃないのか?ステータスの為服を脱ぐ、頭の中で全く繋がらない。まるで「今から本を読むからお風呂入ってきて」と言われているような気持ちだ。
強面の受付の人に恐る恐る聞いてみた。
「あの……えっと……」
「ん?あぁ申し訳ありません。名乗っていませんでした。本日担当させて頂くマルロと申します。宜しくお願いします」
「あ、はい、よろしくお願いしますマルロさん……あの、なんで服を脱がなければいけないんでしょうか?」
「ん?ステータス作成についてご存知無いのですか?失礼ですがお客様ぐらいの年齢で冒険登録をされる方は皆さんご存知ですが」
うん、まぁしょうがないけど馬鹿にされてんなぁ。弁明せねば。
「あの、実は俺脳無しでして、その辺よく知らないんですよ」
「えっ!脳無しですか?!私この仕事30年目ですが初めてお見かけしましたよ!」
うわ、すごい前に乗り出してきた。それにしても脳無しってそんな貴重なのか?だったらもっと国をあげて高待遇にしてくれても良かろうに。
「おっと、失礼しました。そう言うことでしたら1から説明させて頂きます。まずステータスというのは肉体のレベルや魔力を数値化し、同じく魔法の内容を記入したものとなります。冒険者には必須のものであり、これがないと国を跨ぐことも、ましてやクエストを受注することすら出来ません」
なる程、免許証みたいなもんか。にしても肉体のレベル?魔法の内容?当たり前だがまだまだ分からないことだらけだ。
「ステータスの重要性は分かったんですが、結局服はなんで脱ぐんですか?」
「口頭で説明するより実際ご覧いただいた方が分かりやすいでしょう。ついてきていただけますか?」
そう言ってマルロさんは受付の奥に手を指した。
見なきゃ分かりづらいもの?肉体のレベルという話、アリアさんのどんな結果が出ても落ち込むなというセリフ、そして服を脱ぐ……マルロさんについて行きながら、俺はものすごく嫌な予感がした。そして実際その予想は的中してしまう。
「ご覧ください。こちらはステータス専用の"運動場"です。こちらで体力・運動能力テストを行なってもらい、その結果に応じて各項目でS〜Eに振り分けられます」
……最悪だ。無駄にだだっ広い空間。そこにマットが敷いてあったり、恐らく走る為であろうトラックなんかが書いてあった。
これはあれだろ?学校の体育の授業でやらされたあれだろ?自慢じゃないが俺はこのテストでいい結果が出たことがない。1500Mなんて完走出来たことがない、毎年疲れや自身の熱と直射日光により吐いている。てかなんであれは毎年暑い時期にやるんだ?秋とかでいいだろうに。
そんな元の世界のトラウマをわざわざ異世界に来てまで味合わされるとは何という……
「ではこの動きやすい服を貸し出しますので、早速始めましょう。まずは腕立てからです!」
----------------ーーー
2時間ほどかけ、ようやく運動テストが終わった。結論から言おうか・・・全部[E]!!
元々運動能力が高くない上に、ここは冒険者ギルド、採点基準は日本より全体的に高い。無理ゲーだ。
ステータスに載る項目は[速さ][体力][腕力][俊敏性]そして魔力と魔法だ。6項目の内、運動能力に関するものは全て[
正直こんな結果が出て、恥ずかしさが最初にきたが、その後だんだんと怒りが湧いてきた。なんで創作の世界の異世界転移者どもは最初からめちゃめちゃ強いんだ?魔力とかその世界にしかないものならともかく、"力"とか絶対俺と同じ最低ランクだろ!大体俺と同じヒョロヒョロの陰キャのくせしやがって!ふざけんな!ばっくれてやる!
――などと心の中で叫んではいるものの、1人て何やってんだという気持ちが浮上し虚しくなった。大体、世界からばっくれるってそれもう"死"だろ!……はぁ、突っ込むのも虚しい。
「お客様?あの、気を落とさないで下さい。最初はみんなこんなものですよ!」
あんたさっきこんな低いのは初めてだみたいなこと言ってたろうが……。
「そうだ!今度は魔力と魔法の検査です!脳無しの方は魔力が高いと聞いておりますよ!」
「そう……ですね。よし!せめてそっちではいい結果を祈る!お願い神さま仏様異世界さま!」
制服に着替え直し、再度別の部屋に移動することになった。この道すがら、マルロさんに色々と質問をしてみた。
「あの、その魔力検査とかってなんで受付でやんないんですか?さっきのは走ったりするから移動ってのは分かるんですけど、……まさかまた運動系?!」
「いえ、プライバシーの保護のためですよ。自分の魔力や魔法の内容を知られたくないと言う方は結構いらっしゃいますからね」
「あの、さっきから言っている魔法の内容ってなんなんですか?みんな大体同じような魔法を使うのでは?」
「いいえ、魔法というのは人それぞれ異なります。例えば私は
鋼鉄化?形状変化?急に分からなくなった。もっとわかりやすくプリーズ。
「わかりにくいですか?――こんな感じです!」
そう言ってマルロさんは自身の手を鉄の刀に変えた。
すげぇ。腕を切り取ってそこに鉄の刃物をくっつけたみたいになってる。これが魔法!これぞ魔法!
「因みに他の魔法で言うと、自由に空間を移動するものや、雷を放つ魔法なんかもあります。お分かり頂けましたか?」
「ええ!実演交えての説明ですごい分かりやすかったです!」
運動テストでかなり落ち込んでいたテンションも魔法を直接見たこと、そしてこれを俺も使えるということで、取り返すどころかテスト前より上がっている。
「ふふっ。ようやくびくついていないお客様を見られました!」
あっ……そういえば俺、この人のこと見た目だけで判断してずっと敬遠するような態度を見せてしまってたな……。申し訳なくなってきた。
「あの、すいません!勝手に見た目で判断して、勝手に怯えてました」
「気になさらないで下さい。私に取っては日常茶飯事ですので……しかし、そんな風に謝れるとは、綺麗なお方だ」
そう言ってマルロさんは優しい顔で微笑んだ。
「指宿蓮です。お客様じゃなくて、蓮って読んでください。俺、これからギルドに行く時はマルロさんにお願いすることにしました!」
「……そうですか。では、その時はしっかり対応させてもらいますよ――蓮さん!」
そして、丁度よく魔力・魔法検査のできる部屋に到着した。
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到着した部屋には、1つの球体が置いてあった。水晶玉のように透明で、成人男性1人ぐらいの大きさのものだ。
「こちらはオーブと言い、これに触れると球体の中に色が溜まります。その色が占める割合でランクを決定いたします。そして色が溜まり終わった後、自身の血を一滴オーブに垂らして頂くとオーブに魔法の名前と内容が表記されます。ここまでで何か質問は?」
まぁ気になることは色々あるがやってみなければ分からない。
「――大丈夫です。それじゃあ、やります!」
こうして俺は自身の力を知ることとなる。
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