第13話

 真に不遜な連中、略してシンプソンズ(俺命名)に絡まれてから数日。その間俺はアリアさんとの修行やクエスト攻略に勤しんでいた。今日はもう修行は終わったので家でゆっくりしているところだ。


「そういえば、この間のクエストは大変だったな!モンスター目の前にして目丸くして動かないし」


「そうですね、まさか腕が4本の熊がいるとは・・・今思い出しても怖いですよ」


 そういえば、クエストで思い出した。


「そういえばレヴィ大丈夫ですかね?まぁまだ2週間経ってませんけど」


「大丈夫さ、あいつも結構やるし、同行してる冒険者もBランクだしな。滅多なことは起きないよ」


 そんな会話をしていると、突然ドンドン!と扉が叩かれた。誰だ?そう思い扉を開くと、シンプソンズリーダーのバルクだった。


「あの・・・なんすか?てか1人?」


「ああ。あの日アリアさんに言われてな。決闘を申し込みたいんならせめて自分で来い!と」


 そんなこと言ったの?なんでそんなことわざわざ。確認のため、アリアさんの方を見ると、一瞬、なんのこと?と言わんばかりの?顔をしていたが、どうやら思い出したらしく顔を逸らした。


 ・・・多分熱くなって雰囲気に流されちゃったんだろうな。まぁなんと言われようとお断りするだけだ。


「そ、でも俺はやらない。理由は前言った通りだ。俺はお前に勝てん、だから戦わない」


「・・・この前は、脳無しだからってので吹っかけたんだ。凄い魔力を持ってるっていう脳無しなら俺を次のステージへ押し上げてくれるんじゃないかって。だけど今日は違う!この間アリアさん1人に負けてから考えた。あんな人の元で修行してるお前って凄いんじゃないかと!」


「えっと、すいません。結局なにを・・・?」


「つまり!あんなすごい人の元で修行しているお前と勝負したいということだ!!」


「お断りだ!!」


「なっ・・・即答?!・・・お願いしてる人間が言うのもなんだが、お前冒険者としてのプライドとかないのか?」


 プライドってなんだ?勝負吹っかけられたら絶対受けるとか?んなプライド中坊の時に捨てたんだよ!まぁかけられたやつがボコボコにされてるのを見て怖くなって捨てたんだがな。


「とにかく、勝ち目のない勝負は極力しない主義なんだよ!だから帰れ、休憩の邪魔だ!」


「諦めろバルクとやら。蓮のやらないという意思は簡単には崩せんぞ」


「アリアさん!アリアさんからも説得してもらえませんか?俺こいつと戦わないと戦っても見たいんです!」


「だから無理だ。そんなに戦いたいなら魔導祭まで我慢しろ!運が良ければそこでやれるだろ?」


 魔導祭?言ってる内容的にバトルトーナメントみたいなもんか?そもそもそれも出たくないな。


「・・・もしかして、弟子が俺に負けるのが嫌ですか?」


 --あっ!テメェ地雷を!


「なんだとクソガキ?私の弟子が負けるだぁ?・・・んな訳あるか!!」


「ちょっ、アリアさん?まずいまずいまずい!乗せられてるよ!」


 バルクもそれに気がついたのか、徹底的に俺を貶める作戦に出てきやがった。


「まぁ所詮Bですしね!俺にかかればこいつなんてわんぱんでしょうし、手応えないでしょうね!やっぱり戦うのやめときますよ」


「今はBだけどね、成長速度はS級なんだよ!見てなさい!私の蓮はあんた程度には負けないわよ!ぶっ飛ばせ--蓮!!」


 --ま・・・まじかー!こんな簡単な口八丁に乗る人初めて見たよ。真夏のサーファーよりのりまくってるよ。


「よし!決定だな!勝負は3日後でどうだ?」


「いいだろう・・・お前程度ギタンギタンのけちょんけちゃんにしてやるわ!」


 こうして俺の意思は全く反映されぬまま勝負が取り決められてしまった。

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 先程まで怒り昂っていたアリアさん。そんな彼女は今・・・机に突っ伏していた。


「蓮・・・ごめんなさい。勝手に勝負の約束決めちゃうなんて師匠失格ね」


「はい。ほんとそう思います」


「な"っ?!フォロー期待してた訳じゃないけどさ・・・ちょっときつくない?」


「これでも押さえてますよ。本当はもっと罵声を浴びせるつもりだったんですから」


 実際そのつもりだったのだが、予想以上にしょんぼりされたのであまり強くいえなくなった。綺麗って卑怯だ。


「あの・・・本当に嫌だったら私今からでも謝って取り消してもらうけど」


「・・・まぁいいですよ別に。ちょっと嬉しかったんでそのお礼というか・・・」


「嬉しい?戦えて?」


「違いますよ的外れです」


「やっぱきつい!」


「一応、俺が負けるって言われたから怒ってくれた訳ですよね。それに私の蓮とか言われたら・・・なんか、頑張ろうかなって・・・。」


「蓮ー!やっぱりお前は可愛いや--」


「あ、でも怒ってもいますからね。そこはちゃんと反省してください」


「はい、ごめんなさい」


 そんなこんなでバルクと戦うことになってしまったのだが、結局1番の問題である実力差というのが解決されていない。なんとかしてこの実力差を埋めねば。


 それから3日間は、クエストは受けずにアリアさんとの修行だけに専念することとなった。クエストに行ってなにかトラブルがあった場合帰れなくなる可能性もあるからだそうだ。


「よし蓮!今日からは魔法のコントロールや私の雷魔法の使い方をマスターして行こう。因みに今ストックは何回分ある?」


「えっと大体4回分とかですかね」


「お前の主力魔法は恐らくこの雷魔法になるだろう。最低でも一試合10回は打てるようにストックしておけ。それと、今まで見てきてわかったことだが、お前の魔法は手元を離れない限りどれだけ使っても1回とカウントされるようだ」


「ん?つまりどういう・・・?」


「例えば放出する技であれば使った瞬間1回ストックが減るが、常に体に纏わせている場合は魔法を消さない限り減ることはない」


「おお!流石の洞察力。全然気付かなんだ」


「だがリスクもある。これは自分でも自覚があると思うが、ストックした魔法を使用している時、同時に吸収することは出来ない。つまり雷を纏わせている間、吸収の魔法は実質なくなるということだ」


 なるほど・・・もったいないからっていつまでも発動しっぱなしじゃダメってことか。切り捨てるタイミングも理解していかないといけない。今想像しているより大変そうだ。


 それから俺は魔法の発動そしてキャンセルの素早い切り替えの練習や、アリアさん直伝の技の練習などを繰り返した。


 正直これでAランクのやつに勝てるようになったとは思えない。だが短期間でできることはやった。あとは全力を出すだけだ。

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 決戦当日、前回同様しっかりトイレを済ませた俺は、試合会場に足を踏み入れた。前回とは違い街中で騒ぎを起こした訳でもないので、ギャラリーはいなかった。変なプレッシャーがなくて助かった。


「--よぉ!今回はありがとな!正々堂々いい勝負をしよう!」


「正直勝てるとは思ってねぇけど・・・負けるつもりでは来てねぇから安心しろ」


「そうか・・・それは安心だ!」


『それでは--始め!』


 こうして戦いの火蓋が切って落とされた。

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